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まるでスキー場……全国で一番きつい「急勾配あり」標識は恐怖の連続だった

【毎月20日更新】世にも奇妙な道路標識 第5回:急坂に咲く標識

◆ちっとも急ではない「急勾配あり」

 ところが、世の中には1.1%という標識もある。長野県中野市の、国道403号にあったものだ。「急勾配あり」という名に反し、これではちっとも急ではないではないか。

写真を拡大 緩勾配あり(長野県中野市)

 実はこの坂、周辺の地形の関係などで、どう見ても上り坂に見えるのである。実は下っているから、速度など気をつけて下さいという意味で設置されたのだろう。ちょっと特殊なケースである。

 ところでこれ、「1.1」と小数点以下の数字も必要なのだろうか。他でもたまに「7.5%」といった標識を見かけることもあるが、別に7%でも8%でもドライバーにとってやることが変わるわけでもなし、そこまで正確を期する必要があるのかとも思う。

 しかし、世の中にはこんな標識もあるから困る。

写真を拡大 無駄に正確な標識(茨城県笠間市)

 小数点以下3桁である。お前は有効数字というものを学校で習わなかったのか、と突っ込みたくなってしまう。道路管理者と製造者の間で何かしらの行き違いがあってできあがったとしか思えないが、いったいどういう事情だったのだろうか。

 ちょっと不思議なのは、この標識は今や誰も通らない山中の旧道にあるのに、他の標識に比べて妙にきれいに保たれていたことだ。もしや標識マニア間では有名な標識であり、聖地巡礼に訪れる者たちが毎月きれいに磨いていたりするのではあるまいか。あながちありえない話でもない気がするところが恐ろしい。

 さてそうなると、全国で一番きつい坂はいったい何パーセントだろうというのが気になってくる。今はこの手の情報も、ウェブを探すとすぐ出てくるからすごい時代だ。それによると、最大斜度の標識は東京都東大和市にあり、なんと37%だというからひっくり返った。実際に車で走ってみると、25%くらいの傾斜でも体感的にはほぼ崖である。37%はスキー場の上級者コースに相当する傾斜であり、車で走っていいような斜度とは思えない。

次のページ早速東大和市へ向かった!

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佐藤 健太郎

さとう けんたろう

1970年兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。大手医薬品メーカーの研究職を経て、サイエンスライターとして独立。文系の読者にもわかりやすい解説で定評があり、東京大学大学院理学系研究科の広報担当特任助教として東大の研究実績を対外発信する業務も担当した。『医薬品クライシス』(新潮新書)で2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞を受賞。著書はほかに、『「ゼロリスク社会」の罠』『化学で「透明人間」になれますか?』(ともに光文社新書)、『炭素文明論』(新潮新書)、『ふしぎな国道』『世界史を変えた薬』(ともに講談社現代新書)などがある。


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