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揺らぐ教師の存在意義。いま求められるのは『学び合い』だ

ネット教材の発達は脅威。生身の教師、教室でしかできないことを

■無料で、スマホひとつで。ネット教材の目覚ましい進化

 冒頭で言及された「ネット上の教材」も進化が目覚しい。これは「映像授業」の進化と言い換えてもいいだろう。

 一昔前までは、映像授業といえば東進ハイスクールなど一部予備校の教室で受けるDVD授業がそうであった。それがいまはストリーミング技術の発達で、インターネットを通し場所と時間を選ばす、自分が受けたいと思う授業をチョイスできるようになったのだ。スマホひとつで、無料で利用できるサイトも出始めている。

 たとえば「WEB玉塾」は、高校授業のアニメ化をコンセプトにしたユニークなサイトだ。英語、数学1A、数学2Bといったセンター科目から、夢の見つけ方つかみ方といった受験に留まらない“ 人生の科目”まで。幅広いラインナップの中から授業を選ぶことができる。これらはなんと無料、そして広告も入らない。

 他にも「Try IT」は、家庭教師で有名なトライが運営するサービスもある。実力派講師陣の授業を、こちらも0円で受講できる(会員登録は必要)。またスマホを振ることで家庭教師に質問ができてしまうというサービスも用意されている。

 こうしたネット上の教材に対して、学校の教師たちが優位点を見出すのは簡単ではない。確かに教材・授業のクオリティーに関しては、教師たちが研究をして練りに練ったものをぶつければ、その点では対抗できるだろう。しかし一方で学校の教師たちが絶対に持てないものがある。それは“ 巻き戻し”機能だ。

 教室での一斉授業では生徒は「あれっ、ちょっといまの所聞き逃したな」と思ってもなかなか流れを止めて聞き返すことは難しい。それがストリーミング授業であれば、戻してもう一度説明を聞くことができる。逆に「ここはもう知っているよ」という箇所はスキップして省略してもいい。この差は大きい。

 西川氏は今後テクノロジーが発達することで、こうした教材はさらにパワーアップし、生徒それぞれの特性にあわせた問題も出すことも可能になるという。

「ネット教材がもっと発達すれば、問題に対する回答のデータがどんどん蓄積されていく、というシステムもできるでしょう。これが1年、2年、3年と保存されると、生徒それぞれの誤答パターンが分析されます。そしてそのデータに沿って弱点を克服する問題を出す、というようなことができるようになると思います。そしてこれは教師にはできないことです」(西川氏)

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