「日本のヴィテージの歴史を変えた男」が考える「一生モノ」とは?
使い勝手が良いこと…きっと人の数だけ正解が存在する永遠の難問。
その人の生き方が見えるもの、それもまた、ひとつの定義だ。
“良いもの”と暮らす方々に、「私の好きなもの」を訪ねて。
注:文中の内容は2016年秋取材時のものです。
【My Favorite Things #001】
変わることを、楽しむもの。
内田 斉さん 〈JANTIQUES〉オーナー
壁一面に貼った世界地図に年代物の家具、綺麗に整頓されたヴィンテージの数々…普段事務所として使用する一室は、まるで男のロマンチズムを凝縮したアトリエのよう。
「この間まで秋冬物があって、それがお店に行って、今度は春夏物が戻って来て…季節が真逆(笑)。他には最近集めている古いローロデックスや、アメリカで見つけた布張りの折り畳みチェアとか…来年の夏はテント生地と一緒に海のイメージにしても面白いかなって。そんなふうに次のネタを考える場所ですね」
日本のヴィンテージの歴史を変えた伝説的な人物。それを忘れるほど気さくで柔らかな印象の中にも刹那、確固たる信念とこだわりが垣間見える。当然交友関係も多岐に渡るが、それを語る姿もまた、リスペクトの思いに満ちあふれたものだ。
「このサングラスも『バカにしてるんですか?』と思うぐらい、めちゃくちゃ面白いんですけど、ジェネラルリサーチの小林(節正)さんは『ただの日よけだよ』って仰るんです。でもすごく理にかなったものなんですよね。'30年代のヴィンテージによく似たものがあるんですが、使うには重いんです。それを軽いプラスチックに作り替えて、かつ古さを感じさせないっていう…さすがデザイナーさんだと思いますね」
数えきれないほどのモノをその目で見てきた内田さん。そんな彼に、一生モノの定義を訊いてみた。
「僕は変化をするものを好むみたいなんです。デニムの色落ちのようなマイナスの変化も、白いものに汚れが乗るプラスの変化も好きで。逆に変化する途中で壊れちゃうものはアウトだし、常にきれいな状態で保たなきゃいけないものは自分には扱えない。このカップも取っ手が取れたら花瓶にしようとか、色鉛筆がなくなったら違うものを挿そうとか…本当に気に入ってるなら変化を楽しみながら使う。それができるのが一生モノじゃないかなと思いますね」