【両極化の時代】社会課題解決を通して“儲ける”ことで日本は再び成長できる(松江英夫)
二律背反を「つなげる」成長戦略Vol.1
■日本の強みとは「つながり」を最適化する現場力
「両極化」の時代を生き抜くうえで、最も重要なキーワードはつながりである。
両極的なものを分断させず、うまくつなぎ合わせ、多様なステークホルダーと多面、多層的なつながりを持って、各種の課題を解決できる力こそが問われるからだ。
ポスト・コロナに向けて加速する両極化。困難が進行しているようにみえる時代だが、実は今こそ、日本の強みが生かせる時代でもある。
では日本の強みとは何か、それは一言で言えば最適化する現場力だ。
日本は歴史的に、外国から異質な文化を取り込み、自分流にアレンジ、最適化させるというプロセスを繰り返しながら発展してきた。
代表的には、製造現場の擦り合わせ技術や、作り手(生産者)と使い手(消費者)という立場の違う双方が一体となって作り上げたジャパン・クオリティ(日本品質)などがその例である。
このように、「両極なるもの」いずれかを排除する二項対立の構図にせず、多面的・多層的につながりをもたせることは日本の伝統的な強みだ。
この強みを生かすべき時が今であり、「失われた30年からの脱却」と「先例なき時代」を生き残る鍵となる。
日本は「課題先進国」と言われて久しい。社会価値と経済価値の両立が求められる「両極化」の時代に、日本の強みを活かして課題解決を牽引することの意味は大きい一方で、現実に目を向けるとその道のりは遠い。
我々の調査において、日本とグローバル企業の経営者に「社会課題解決に取り組む理由」を尋ねたところ、グローバル全体で最も多くの回答を集めた「収益の創出」(42%)について、日本の経営者からの回答は1%と極端に低いレベルにとどまった(下記【図表】参照)。
日本の経営者は、社会課題解決を収益創出の機会という経済価値へとつなげて捉える戦略的発想において、グローバル水準に比して大きく立ち遅れている。