教員資格にも影響を与えかねない【教員のデジタル化・オンライン化】
第48回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
■曖昧な文科省のビジョンに、教員はどう対応すればいいのか
これがストレートに実現されるとなれば、教員免許を持たない人がオンライン授業を行う風景が当たり前になるかもしれない。
そうなった時、教員免許は持っていてもオンライン授業が得意ではない教員の居場所はあるのだろうか。オンラインで授業する力をつけるための研修や自主学習に追われて、さらに教員は多忙化を強いられるかもしれない。それでも力不足と評価されれば、肩身の狭い思いをすることになるかもしれない。
しかも、萩生田文科相をはじめ文科省の姿勢が定まっているとは思えない。
10月9日の記者会見で萩生田文科相は、オンラインで授業を行う際には原則として児童や生徒のそばに教員が同席することが必要だという考えを強調している。
オンラインの授業といえば、子どもたちの端末のモニターの向こうに教員がいる姿を思い浮かべる。しかし萩生田文科相は、モニターと向き合っている子どもたちと同じ場所に教員がいることを求めているのだ。
はたして、それがオンラインの姿なのだろうか。萩生田文科相がオンラインによる授業をどのようにイメージしているのか、まったく分からない。
■オンライン授業には人と環境、そしてゴールが必要
さらに萩生田文科相は16日の記者会見で、後期授業の対面割合が3割以下と回答した国公私立大などを対象に再調査したうえで、対面授業の割合が少ないところについては、11月上旬をめどに大学名も含めて結果を公表すると述べている。これはオンラインを減らして対面の授業を増やせとの「圧力」でしかない。
菅首相などはオンラインでの授業を大いに推進する姿勢をみせているにもかかわらず、萩生田文科相は対面授業を増やせと言っているわけだ。
大学だけでなく、こうした萩生田文科相の姿勢は小中高校にも影響してくるはずだ。オンラインに力を入れようとすれば、対面での授業を求められることになりかねない。積極的にオンラインでの授業に取り組むべきなのかどうか、学校現場は悩ましい状況になってきているのだ。
そうしているうちに、規制緩和が実現すれば、教員免許は持たないがオンライン授業はできる人材が増えていくことになる。
対面での授業を強調する萩生田文科相の意向を汲んで、オンラインへの取り組みが遅れれば、外部からの人材に教員の役割は奪われることになる。いたずらにオンライン化の動きに振り回されのではなく、教員の役割を根本から問い直す必要があるかもしれない。
教員にとって、死活問題につながる可能性すらある事態が進行しようとしている。
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