気鋭の映画監督が考えた「良いもの」の定義とは?
使い勝手が良いこと…きっと人の数だけ正解が存在する永遠の難問。
その人の生き方が見えるもの、それもまた、ひとつの定義だ。
“良いもの”と暮らす方々に、「私の好きなもの」を訪ねて。
注:文中の内容は2016年秋取材時のものです。
【My Favorite Things #003】
シンプルで飽きないもの。
タナダ ユキさん 映画監督
「モノを買うときには吟味に吟味を重ねます。でもこだわりとかはないんです。そのときに出会ったもの、デザインが気に入ったものという感じで。もともとブランド物や高級なものにそんなに興味を持っていないというのもあるんですけど…」
そう語るのは、映画監督のほか脚本家や小説家としての顔も持つタナダユキさん。彼女にとっての“良いもの”の定義を訪ねると、「飽きないこと」という答えが返ってきた。
「高い、安いじゃなく、本当に飽きなければ…例えば、料理の道具だったら丈夫で長く使えるもの。それこそ、一生使えるぐらい。インテリアもデザイン重視ですね。物を書く仕事をしているので、いい椅子が欲しいとは思っているんですけど…なかなか合うものがなくて、今は普通のものを使っています。でも、作業机のようなものは自分で作りました。鉄製の脚と脚場板を買って、ドリルでネジを留めて…既製品で買おうとすると、欲しいサイズだと結構な値段がするんです。自分で作れば、材料で2万円ぐらいで済むので」
欲しいものがないときは、自分で作るというタナダさん。紹介いただいた革製のケースもそのひとつ。
「作るのが面白いというか、私にとってひとつのストレス解消法なんです(笑)。『こういうのができた!すごい!』みたいな。忙しいときに限ってやりたくなるので困ります。本当に、現実逃避ですね」
そんなタナダさんがいつか欲しい、憧れの“モノ”を尋ねてみた。
「革専用の“腕ミシン”です。今は中古でしか手に入らないんですが、少し作りこんだデザインの鞄になると普通のミシンだとなかなか難しくて。手縫いで作れないこともないんですけど、私、できるだけ手縫いしたくなくて(笑)。なるべく早く縫いたい。作る時間を楽しむとかなく、早く完成が見たいんです。いつか手に入れたら作ってみたいですね」