【創造への信念】本気のCSR——社員の笑顔を守り抜く「覚悟」と総合ウェルネスカンパニーへの「挑戦」(アデランス代表取締役社長・津村佳宏)
アデランス代表取締役社長 津村佳宏
「失われた30年」と言われる日本。
この難局をどう乗り越えるべきか。社会課題を「創造力」で解決する各界のリーダーが求められている。
世界一の売上の毛髪関連事業を核としながら「総合ウェルネスカンパニー」への変貌を遂げるアデランスの津村佳宏社長が、リーダーの信念を語る。
■笑顔あふれる心豊かな社会へ 創業の理念で社会貢献活動
アデランスは、1968年、根本信男(現・代表取締役会長)が男性用オーダーメイドウィッグの会社として創業。以来52年、「トータルヘアソリューション」事業として発展してまいりました。
毛髪に関する悩みは、男性だけでなく女性、病気やケガ、火傷などで髪を失った方などから多く寄せられました。私たちは髪で悩まれている方々の人生に寄り添い、笑顔にすることを目指しながら課題解決に取り組んできたのです。
本業の強みを社会で活かすこと。それがCSR(企業の社会的責任)活動になることだと考え、例えば、髪を失ったお子さまにウィッグをプレゼントする「愛のチャリティ」活動は40年以上継続しております。
また抗がん剤治療の副作用で脱毛される患者様に対して「病院内理美容サロン」を開設。医療用ウィッグの進化と普及へとつなげました。さらに最高の商品を開発すべく産学共同での研究、芸術文化のための技術協力なども積極的に実施してきました。
アデランスは社会貢献することで好循環を生み出しながら発展してきた経緯があります。しかし、2000年代に入り、試練の時を迎えます。売上が伸び悩む中、外資の投資ファンドが激しい株式争奪戦の末、経営権を握ります。
■上場廃止に込めた信念 すべては笑顔のために
投資ファンドが経営権を握った2009年以降、ファンド重視の経営方針で私たちの事業は混乱に陥りました。現場を熟知していないファンドが招聘した経営陣と社員との間には「溝」が生まれ、社員から笑顔が消えたのです。
そして、経営悪化を招く結果となりました。このような経験から15年に代表取締役、17年に社長に就任した私は経営再建にあたり、企業の存在価値と経営倫理について徹底的に考えました。
アデランスは17年2月、私たち経営陣によるMBOで非上場化しました。原点に立ち返ることが目的でした。
経営には売上利益は重要です。しかし、中長期的視点で考えると、企業価値を創造する根っこ、つまり、アデランス再生の鍵は創業からの理念(CSR)にあることだと確信したのです。
「笑顔と心豊かな暮らしに貢献すること」。さらに「最高の商品」「最高の技術と知識」「心からのおもてなし」という経営理念を徹底的にやる覚悟を決めました。
まず私は、社員のやり甲斐を高めることを最優先とし、取引先様とのパートナーシップの強化にて、良い商品、良いサービスを生み出し、それにより、お客様満足の向上を高め「笑顔」を増やすことを方針としたのです。
■笑顔が循環する三方よし もう一度ベンチャー企業に
社員の笑顔とは換言すれば、仕事へのやり甲斐や帰属意識です。私たちはECSR 三方よし経営を軸に、まずES(社員満足)改善に取り組み、仕事へのやり甲斐を強化しました。
ECSRとは、ES(社員満足)、CS(お客様満足)、CSR(企業の社会的責任)を合わせた三方よし経営です。
さらにCSR活動を小冊子『笑顔のために』にまとめ社員と家族、取引先などに配布し、会社への帰属意識が高まりました。
またサーバントリーダーシップを実践。社員に仕事の自主性を高める方針としたのです。すると、現場に「笑顔」が戻り、お客様満足につながり、社会貢献活動も高めました。
この「三方よし」の好循環が低迷していた売上利益回復の道筋となり、17年から毎期連続にて最高売上げを記録し、増収増益となったのです。
私たちは、常にベンチャースピリットを持ち、新たに美容・健康・医療も事業ドメインに加え、世界の人々へ笑顔を届けると共に環境保全など、SDGsについても積極的に取り組んでまいります。
津村佳宏(つむら・よしひろ) 株式会社アデランス代表取締役社長、グループCEO。1963年広島県出身。82年、同社入社。東北営業部長、営業本部長、代表取締役専務、同副社長を経て、2017年に代表取締役社長に就任。早稲田大学人間科学部卒。金沢工業大学客員研究員。毛髪診断士認定指導講師。日本経営倫理学会所属。一般財団法人 日本化粧療法医学会 副代表理事