【「祖先」のルーツ】名字の8割は「地名」に由来! 自分の名字は❶地名❷地形❸方位❹職業❺下に「藤」でわかる‼️《47都道府県「地名の謎」》
姓氏の成り立ちから祖先のルーツを探る
約10万種類以上あるといわれている日本人の名字。
そのほとんどが日本各地の地名、または地形に由来するという。
先祖がどんな場所に暮らしていたのか、名字から探ってみよう。
■農民も昔から名字を持っていた
日本人が誰でも持っている名字は、いつ頃からあるのだろうか。
そもそもは古代の大和王権の有力氏族が互いを区別するため、名前をつけた。「中臣氏(なかとみうじ)」「物部氏(もののべうじ)」など職業にちなんだものもあるが、「吉備氏(きびうじ)」「 尾張氏(おわりうじ)」など、国名をつけたものもある。
名前で、氏族の出身地域がわかるのだ。
平安時代中期以降、貴族は邸宅や別荘のあった場所の地名を名字にすることが多かった。日本各地で勢力を伸ばした有力武士は、惣領(そうりょう)のみが先祖伝来の姓を名乗り、それ以外の子は本家の近くに居を構えて、その地名を名字とした。
貴族、武士の間で広まった名字を一般庶民が使うようになった時期ははっきりしない。
ただ、文献資料から読み解くと、少なくとも室町時代以前から存在していたと考えられる。
その総数は正式な調査がなく、現代では約10万から20万あるといわれている。
「名字の基本的な役割は、家と家を区別すること。そのために住んでいる場所を手がかりにすることが多いですね」
姓氏研究家で、名字に関する著書も多い森岡浩さんは言う。
「法事で親戚が集まると自然に、『大阪の叔母さん』などと呼びます。それと同じように地名で呼ぶようになったのが名字の始まり。昔は引っ越しがなかったので、それが固定して一族の名字になった。自然発生的に誕生したのです」
■地形や方角も名字になる
日本は人口密度が高く、同じ地名の土地にたくさんの家がある。
地名由来の名字だけでは家々の区別が付かない場合、地形や風景などで区別をした。
「山」「川」「谷」などの自然の地形、人の手が入った「田」「畑」「塚」「堀」なども名字に多く活用されている。
また方位方角も大切な要素だ。基本は東西南北で、本家から分家した一族が、本家から見てどの方角に住んだかで決まる。「上」「下」「中」「前」などの方位を示す言葉も重要だ。
数は多くないが、職業由来の名字もある。機織(はたおり)をする「服部(はっとり)」、弓を作る「 弓削(ゆげ)」、荘園を管理する「庄司(しょじ)」、「越後屋(えちごや)」などの屋号を名乗る商家などだ。
これらは自然発生的な名前だが、平安時代の大貴族・藤原氏に由来する「下に藤」がつく名前は人為的だ。藤という漢字を使って藤原氏であることを示しながら、自分の家を区別するため「地名+藤」という名字を考案した。たとえば加賀の藤原氏は「加藤」、近江の藤原氏は「近藤」という名字になる。
【名字の由来は大きく5タイプ】 ❶ 地名 ❷ 地形、風景 ❸ 方位、方角 ❹ 職業 ❺ 下に藤
自分の名字の由来を知りたいときは、①地名、②地形・風景、③方位・方角、④職業、⑤下に藤を手がかりに探求しよう。多くの名字は①~③で判断がつく。②と③が組み合わされ「川上」「山下」などの名字になることも多い。方位には北を子、東を卯など干支をあてる呼び名もあり、「巽」「辰巳」(南東のこと)などの名字も方位姓だ。