「子どものため」のようで、経済界に影響されているだけの日本の教育
知ったかぶりでは許されない「学校のリアル」 第8回
◆経済界・産業界が表明した教育についての“ある提言”
経済界は常に教育に口をだす。まずは、次の一文を読んでいただきたい。
「今後は、多様な文化、社会的背景を持つ人々と協力し、国際的なビジネスの現場で活躍できる『グローバル人材』を育成し、活用していくことが求められる」
これは、日本経済団体連合会(経団連)が公表した「グローバル人材の育成に向けた提言」(以下、提言)の「はじめに」にある。そのグローバル人材については注釈で、「日本企業の事業活動のグローバル化を担い、グローバル・ビジネスで活躍する(本社の)日本人及び外国人人材」と説明されている。
つまり、グローバル人材の育成と活用が、今後の日本企業にとっては重要になってくる、と言っているわけだ。その経団連は、当時の現状をどのようにとらえていたのか。同じ「はじめに」は、次のように続けている。
「初等中等教育におけるゆとり教育、大学全入時代における大学生の質の低下、若者のあいだに広がる内向き志向などにより、現状では、産業界の求めるグローバル人材と、大学側が育成する人材との間に乖離が生じている」
経済界・産業界が「グローバル人材」を求めているという表明であり、「ゆとり教育」を否定し、「大学生の質の低下」への苦言だった。この提言が公表されたのは、2011年6月14日のことだった。この年の4月から戦後8度目の改訂となる学習指導要領が小学校で完全実施され、翌年度からは中学校で全面実施されている。この改訂学習指導要領による教育は「脱ゆとり教育」と呼ばれ、前回の学習指導要領で導入された「ゆとり教育」を否定し、再び学力中心の教育へ揺り戻すものだった。
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