【地域課題解決のためのGR】「新型コロナウイルスを官民連携で乗り越える」ために何が必要か《第1回GR勉強会》鎌倉市長・松尾崇、CFJ・関治之、カマコン・宮田正秀》
GR勉強会
◼︎地域経済圏づくりをどう行うか
吉田———関さんから、松尾市長にお聞きしたいことはありますか。
関———今後、アフター・コロナでは、中央集権ではなく地域経済圏が大事だといわれております。市長には、今後の地域経済圏づくりについての考えをお伺いしたいと思います。
松尾———三浦半島サミット、吉田さんが横須賀市長時代につくった地域経済圏としての枠組みがあるのですが、コロナの後に本当に大事だなと思うのは、エネルギーと食糧、この二つの問題だと考えております。再生可能エネルギーと食糧をいかに自給自足できるか、鎌倉市だけでなく、ある程度の地域でこれをどのように確立するかについては徹底的にやらねばならない課題だと思っており、ほかの自治体と連携しながら進めていきたいというのが一つあります。
それから今後もう一つ大事になるのが、医療と教育です。この二つを徹底的に磨きをかけていく。住む人たちの大きな選択肢となりうると思っております。ここも一自治体よりも広域の連携のなかでつくりあげるものかと考えております。
今申し上げたエネルギー・食糧・医療・教育の四つの分野を切り口に地域の連携を進めていきたいと思います。三浦半島という地理的な部分もありますし、東日本大震災のときにもあったような首都圏と地方の連携も、とくに教育分野などは首都圏の子どもと地方地域の子どもの意識はだいぶ違ってきていると感じますので、こういうところかの地域交流をはじめたいと思っています。
関———ありがとうございます。やはり、横をつなげるというのは、市民コミュニティとか、企業とかをうまく使うのはありだと思います。
吉田———鎌倉市には「カマコン」があり、「カヤック」を中心とするIT企業も集まっているので、すごくいい連携ができていると、外から見て羨ましいです。
さて最後に「アフター・コロナ、ウィズ・コロナで首長に必要な能力とは何か」という問いで締めたいと思いますが、松尾市長にお聞きします。
◼︎アフター・コロナ、ウィズ・コロナで首長に必要な能力とは何か
松尾———自分を棚に上げて言うところもあるのですが、平時からいざ危機が生じたときに、どれだけ対応、対策が取れる関係性ができているか、非常に大事だと今回のコロナで感じています。
あと青年市長会の仲間をみているなかでは、やはり危機に対しての発信力、住民のみなさんが不安に思っていることに関してきちんと自分の言葉でそれを伝えられること、またいま行政がやっている町ぐるみで行っていることをしっかりと透明性をもって伝えられているかというのが、非常に大事だと感じています。
例えば生駒市(奈良県)市長の小紫雅史さんですとか、別府市(大分県)市長の長野恭弘さんですとか、両氏は非常にその点では優れていて安心感と信頼感があると感じています。
吉田———私は、首長としては松尾市長の取り組みがいいと思うんです。平時の取り組みとして常に社会的弱者と呼ばれる方々に寄り添う姿勢がすごくいいと思っており、今回コロナ対策で感心したのは、町内会の総会が感染する恐れがあり、開催できず書面決議になるというときに、その書面のテンプレートを配ったんですね。これって普段のコミュニケーションができていないと、思いつかない発想だと思いました。あと、高齢者に特化したコロナに関するチラシを全戸配布したりと、鎌倉ならではの平時、有事のブレない軸があったと感じました。
松尾———やはりこういうコロナの事態で真っ先に影響が出るのが、社会的弱者と言われる方々で、妊婦、幼い子どもたち、高齢者、また、福祉施設に行かれている方に我々は一番アンテナを立てながらアンケートや連絡をこまめにさせていただきました。とくに今回は1週間ごとに状況が変化していたので非常に意識を配り、職員みんながそういう思いでやってくれていたと思います。
吉田———最後にウィズ・コロナ、アフターコロナで関さんがどのような挑戦をしていきたいか官民連携の文脈を入れながらまとめていただければと思います。
関———いま最後の市長のコロナ対策のやりとりはすばらしいと思っていて、とくに今、弱者に対する社会的しわ寄せがきているという状態のなかでどういうふうに弱者にサポートしていくのかがとても大事だと思っています。
CFJも「ソーシャル・テクノロジー・オフィサー」という取り組みに力を入れております。どういう取り組みかというと、NPOをITで支援する活動です。現在、社会的弱者の層が増えてきている。これまで中間層であっても生活が困っている人が増えているのに、その困惑を誰に相談してよいのかわからないとか、NPO自身もアウトリーチ力が減っているので、なかなか支援に行けない状況もあります。それに対してITをうまく使うことで、困っている人をうまくつなげ助けたり、NPO自身の能力を高められるのではないかという活動をやっています。
具体的には静岡の「フードバンク」の生活困窮者支援(POPOLO生活相談ナビ)の「LINE」で相談できるシステムをつくったりしているのですが、今後の官民連携を考えたときに、NPOとどうやってうまく使うかというところが大事だと思います。今まで縦割りでサポートできなかったところをうまくつないでいるところもありましたが、新しい社会課題にNPOとかと連携しながら活動していくこととかを私たちはやっていきたいと思っています。またそういうことをやりたいというNPOと「もっとオープン・データを使おう」みたいに働きかけながらご一緒させていただきたいと考えています。◼︎
「コロナ対策 自治体最前線‼️」
https://covid19.graj.org/
【日本販GRとはどんなときに役立つのか】
【(一社)日本GR協会とは】
行政だけでは解決できない構造的な課題が増えている。お金もない、人もいない、新しい課題に対応できるノウハウもない。一方で民間にはサービス・ソリューション・プロダクトがあり、課題解決に資する。それをうまくマッチさせることで良質な戦略的な官民連携を行うことで地域課題解決が前に進む。これがGRであり、GR協会はそれを広めていく組織です。
具体的にはGRを広めて、GRの成功・失敗事例が学べ、課題解決に当たるプレーヤー同士が属する組織を超えて「つながれる」ことがGR協会設立の目的と理由です。(2020年1月設立)
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