圧巻の県大会制覇。聖光学院「二人の監督」が見据える最強チーム
東北の頂を取るために必要なものとは
ふたりの監督が口を揃えた
能力はあるが殻を打ち破れない――。そんな言葉が当てはまるチームだった。新チーム結成直後の8月。国学院栃木との練習試合で、初回に4点を取ったものの最終的に逆転負け。優しく、純粋であるがゆえに勝負所で粘り切れずにいた。
それでも彼らは、自らの力でその殻を打ち破ってみせた。
国学院栃木の敗戦からまもなくして組まれた茨城遠征が契機だった。水城に8-6、7-6。霞ヶ浦に5-4、8-6。常総学院に3-3と、強豪相手に接戦を演じ、ほとんどの試合で勝利してみせたのだ。
横山部長の胸に、確かな感触が刻まれる。
「接戦のなかでタフさが出るようになった。一瞬のプレーにとらわれず、試合、勝負に没頭できるようになった」
いわば、新チームの分岐点である。選手たちの変貌は、斎藤監督も(それを)ひしひしと感じていた。そして、彼らが殻を破れた理由をこう分析する。
「それまで、俺に『まだ、仕上がってません』と嘆いていた部長が『変わった』と言っていたからね。確かに、あの茨城遠征でチームがガラッと変わった。BチームからAチームに昇格した当初は、『自分らには何もない』という不安や恐怖心があったと思う。それが、秋を戦う上での覚悟が出始めたというか、尻に火が付いた」
導火線に点火された聖光学院は、その後の練習試合では10点ゲームが当たり前。斎藤監督に「こんなに強すぎるのはマズい」と危機感を抱かせるほど、圧倒的な力を維持しながら秋の県大会を迎えたわけだが、初戦の喜多方桐桜高戦で3-0と緊迫した試合を演じたことで、「自分たちの足元を冷静に見つめ直すことができた」と、”ふたり”の監督が口を揃える。
秋3連覇。今年に関しては「福島に敵なし」と言えるほど、相手を圧倒した。横山部長は県大会を経て「今の選手たちは急速に大人になっている」と目じりを下げる。
福島を制し、東北大会の切符を掴むという第一関門は突破した。次なる目標は、いまだ成し得ていない秋の東北王者である。
斎藤監督が聖光学院の野望を代弁する。
「獲ったことのない東北の旗を聖光学院に持ち帰りたい。秋の東北大会で優勝して、明治神宮大会を経験する。それを実現できれば、日本一という大きな目標をよりイメージできるとは思っている」
横山部長が育てたBチームを、斎藤監督がAチームで昇華させる。日々、熟成される顕在化。彼らが、開催地である地元・福島で、東北の頂に旗を立てる。