「メッシは育てられないけど、メッシを止める選手は育てられる」断言するスペインサッカーのすごさ
元サッカー日本代表・岩政がジャーナリストに逆取材-2
草サッカーにも表れる日本とスペインの差
岩政 そういうのを聞くと差を感じちゃいますね。近づいてるように見えて差がある。
小澤 そうですね。トップトップだけを見ると、それこそ日本代表がヨーロッパに遠征していい試合をすることはあり得ると思うし、ワールドカップの本大会でも単発では日本代表がいい戦い、結果を出してくれることはあると思います。でも裾野はといえば……。例えば、それは草サッカーをしていても感じました。
岩政 なるほど。というのは?
小澤 岩政さんが「勝負所を分かってる選手って勝負所を決めていなくて、ぱっと瞬間的にいい判断を連続でできる」と「PITCH LEVEL」で書かれていますけど、まさにそれを感じていました。僕は、日本人の指導者をスペインに連れていくコーディネートをするんですけど、出来る限り地元の草サッカーに交じってもらうようにしているんですね。
それで一緒にプレーするんですけど、日本人指導者のチームってパスも回るし、足元うまいんですよ。うまいんですけど、決定的にゴールが取れない、ゴールが守れないんです。スペイン人チームに対して「うまくない」とか「下手」って言うんですけど、試合は負けている。そういう傾向が露骨にでます。結局、スペインのチームは勝負所を分かっている。点を取れるポイント、守れるポイントを知っている。中盤で日本人がこねくり回していても、別にそんなの好きにしてていいよ、って感じなんですね。
岩政 へえーそっか。それはスペインのチームはどこのポイントを押さえていると思いますか。
小澤 どうですかね、きちんとボックス周辺のところでプレーしてることは感じますね。
岩政 「こういうプレーがきたら、こうなりそうだ」ということがだいたい分かってる。
小澤 はい。自分がどの選手と組んだら一番得をするのかを早い段階で察知する選手が多いです。こいつだったらこういうタイミングでパスが出てくるな、っていうのを感じる。あるいはそれを探す。草サッカーなんで、初めてプレーする人ばっかりじゃないですか。でも向こうの、スペイン人とか南米、アルゼンチンの人たちもいるんですけど、こいつだったらこういうパス出てくるなとか、特徴を見つけるのが早いです。だから「組んでプレーできる」選手が多い。
岩政 なるほど……あー、それなんて言葉で言えばいいんだろうな……。「関わりあう」感じ? 確かにそれは日本の子たちに少ないかもしれない……。
小澤 日本人はどちらかというと自分のやりたいプレーをやるんで、味方も敵も気にしていないんですよ。スペイン人とかは自分のやりたいことは持っているんだけど、相乗効果を出すために味方の特徴をリサーチして早く見つけて、こいつと組んだら自分のこういう能力がもっと出せるというふうに考えているように見えます。その能力は本当に高いですね。
岩政 つまり……日本の「自分たち」っていう言い方と彼らの「自分たち」っていう言い方が違うのかもしれないですね。
小澤 違いますね。スペインでいう上手い選手の定義も日本と違うと思いますし。
岩政 そうか、それはありますね。これはどこかで言語化したいですね。おもしろいなあ。
小澤 してください(笑)。だから岩政さんも今までいろんな人と組んできたでしょうけど、たぶん岩政さんと組んだときにちょっと「自分のプレー」の仕方を変えられるような選手ってあまりいなかったと思うんです。【第一回はこちら】【第三回はこちら】