日本人は「劣等感から生れた不自然な自己過信」を卒業しなかった〜三島由紀夫が叱った現代日本②
日本人は豚になる〜三島由紀夫の予言
共同体から切断され、不安に支配された大衆は、新しい生き方を提示し、人生の目的を与えてくれる疑似共同体に接近していく。彼らは不安をごまかすため、自分たちより下のものを叩いて安心したいが、すでに日本は三流国になっている。現実との整合性がつかなくなってきたので、ことさらに「日本スゴイ」と叫ぶようになる。こうして自己欺瞞の天才になる。三島由紀夫は日本の行く末を正確に予言していた。作家適菜収氏が新刊『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』でそのすべてを明らかにする。
■お茶漬けナショナリズムについて
一時期、書店にネトウヨ本があふれていた。情弱向けの自称保守系雑誌もそこそこ売れているみたいなので、「愛国ブーム」も完全に終わったわけではないのだろう。
興味深いのは、こうした動きは日本が三流国に転落していくのと軌を一にしていることだ。自信がなくなってきたので、ことさらに「日本スゴイ」と叫ばなければならなくなる。
しかし、本当に一流の人間は「私は一流です」とは言わない。
クズに限って、言葉の端々に「自分は一流アピール」を組み込む。
昔、シンガポールで鮨チェーンを経営している社長に会ったら、いきなり財布からブラックカードを取り出して「今日はこれで払います」と言う。ブラックカードを見せつけたかったらしい。子供かよ。
これは本当の話かどうか知らないが、一部の韓国人エリートは、自己紹介のとき、名前より先に学歴を言うらしい。「私はソウル大学出身です」みたいな。
話が少しそれたが、三島は「愛国心」が嫌いだった。
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実は私は「愛国心」といふ言葉があまり好きではない。何となく、「愛妻家」といふ言葉に似た、背中のゾッとするやうな感じをおぼえる。この、好かない、といふ意味は、一部の神経質な人たちが愛国心といふ言葉から感じる政治的アレルギーの症状とは、また少しちがつてゐる。ただ何となく虫が好かず、さういふ言葉には、できることならソッポを向いてゐたいのである。
この言葉には官製のにほひがする。また、言葉としての由緒ややさしさがない。どことなく押しつけがましい。反感を買ふのももつともだと思はれるものが、その底に揺曳(ようえい)している。(「愛国心」)
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一流の人間が「私は一流です」と言わないのと同じで、愛国者を自称するようなやつが愛国者だったためしがない。実際、わが国では愛国者を自称する連中・メディアがその対極にある新自由主義勢力・反日カルトを担ぎ上げてきた。
思想の根幹がデタラメだから、ご都合主義の愛国になる。歴史の断片を拾い集めて「これが真実の歴史だ」と大声を上げる。
三笠宮崇仁親王はこうおっしゃった。
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偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴と罵られた世の中を私は経験してきた。(「日本のあけぼの 建国と紀元をめぐって」)
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今の時代も同じだ。
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