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12~13。カズオ・イシグロを“数字”で読む。「名翻訳家」が出した数字の意味とは?

フォグカウントと、グレードレベルから分析 土屋政雄氏インタビュー②

カズオ・イシグロの陰に名翻訳家あり――。ノーベル文学賞を受賞、いま話題のカズオ・イシグロ。その代表作『日の名残り』『わたしを離さないで』から最新刊『忘れられた巨人』はいずれもひとりの翻訳家の手によって、私たち日本の読者の元に届けられている。BEST T!MES編集部が、その翻訳家・土屋政雄氏に独占インタビュー。全三回。第二回目は翻訳論をうかがった。

1バイト文字の英語と2バイト文字の日本語。両者の関係性を意識

 土屋さんは、翻訳家でありながら数字が好き。今回のインタビュー取材中に印象深かったことだ。翻訳をする時にも、気にしていたのは“キロバイト”だという。どういうことなのか。

「マニュアル翻訳をしていた時です。英語でもらう原文データと、納品する訳文データ、そのファイルサイズがだいたい一緒になると気づいたんです。

 考えてみると英語は1バイト文字、日本語はひらがなも漢字もみんな2バイト文字なんです。具体的に言うと“beautiful”、これは1×9文字=9バイト。日本語で「うつくしい」と訳したとすると、1文字が2バイトなので2×5文字=10バイト。「美しい」とすれば2×3文字=6バイトという計算です。漢字を使えば使うほど日本語のファイルサイズは小さくなります。そして私は両者の数を常に意識していました」

 そして好奇心から、他の翻訳家の数字も調べるようになったという。

「ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』は私の他に6人ぐらいの方が翻訳しています。全部は手に入らず4人分くらいの翻訳者のテキストをデータ化したことがありました。あまり声を大にしては言えないやり方なのですが、研究目的ということでご容赦ください(笑)。

 原文のファイルサイズを100%として、日本語のファイルサイズが何%になっているか、調べたのです。そうすると他の方は全員100%を超えていて、103%から112%ぐらいまである。私は94%でした。

次のページ翻訳には波がある。徹底的な推敲によってならしていった

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土屋 政雄

つちや まさお

翻訳家。主な訳書に『日はまた昇る 新訳版』(アーネスト・ヘミングウェイ)、『ダロウェイ夫人』(ヴァージニア・ウルフ)、『ねじの回転』(ジェイムズ)、『コンゴ・ジャーニー』(レドモンド・オハンロン)、『エデンの東』(ジョン・スタインベック)など。ほか『日の名残り』にはじまり、『わたしを離さないで』、『忘れられた巨人』などカズオ・イシグロ作品を数多く翻訳。


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