ふるさと納税で奨学金返還を支援? 地域を想う自治体職員のアイデアと熱意
【自治体職員×ふるさと納税】による地域の課題解決
故郷や応援したい自治体に寄付をすることで、税金の控除が受けられる『ふるさと納税』制度。自治体からのお礼の品である「返礼品」に目がいきがちですが、この「寄付」が自治体によって、どのように活用されているかはあまり知られていません。
その具体的な活用法、そして実際に寄付金を預かる自治体職員の想いはどのようなものなのでしょうか。
ふるさと納税総合サイト『ふるさとチョイス』を運営する株式会社トラストバンクが開催する『ふるさとチョイスアワード2020』を取材しました。
■地域の未来を切り拓く「自治体職員」という存在
去る10月、ふるさと納税の「使い道」にスポットを当てた『ふるさとチョイスアワード』がオンラインにて開催されました。
このイベントは、全国の自治体がふるさと納税を活用して行った取り組みの中から、地域の課題解決や活性化などにつながった事例を表彰するものです。
7回目を迎えた今回は合計71件の応募から13件がノミネート。それぞれ熱い想いが溢れるプレゼンテーションが繰り広げられ、審査員が胸を打たれる瞬間も多くありました。
ふるさと納税を活用することで、地域を元気にしたい。町の魅力を知ってもらいたい。
賞のカテゴリに関わらず、すべての自治体や事業者の地域に対する想いは同じですが、中でも注目したいのは『チョイス自治体職員大賞』『チョイス自治体職員大賞(U30 新人賞)』の2つ。
「顔の見えにくい」自治体職員たちが主役となる賞です。
■想いからはじまる、目からウロコの活用法
『チョイス自治体職員大賞』を受賞した福井県・坂井市には、市民が寄付金の使い方を提案〜決定する『寄付市民参画制度』があります。小玉さんは「寄付金には人々の想いが詰まっている」と実感するにつれ、担当者としての責任感、そして決意が強まっていったといいます。
若手職員によるプロジェクトチームを発足し、ふるさと納税の事業規模拡大と想像力豊かな活用法を提案していきました。
そこで実現したもののひとつが「奨学金返還支援」事業です。
これは、寄付金をUターン帰郷者が背負う奨学金の返還に充てる取り組みのこと。人口が減少し、地域事業の衰退が懸念される自治体において、帰郷者は貴重な存在。この支援制度が後押しとなってUターンする若者は増え、地域事業の活性化に繋がっています。
そして現在、坂井市は総額1億円規模のふるさと納税事業が実施できるようになりました。これは小玉さんが担当者になった初期の頃と比較して、約30倍の数字。「寄付金を預かる」という使命感を強く持ち、様々なアイデアを検討し、そして行動にうつしていった結果だといえるでしょう。
■ふるさと納税で「ツナガル」のは?
山形県・天童市の清水さんは何と、寄付者一人一人にお礼のメールを送っています。そればかりではなく、自慢の返礼品である果物を美味しく食べてもらうために、発送日の調整を清水さん自身がしたり、返礼品である桃やさくらんぼに関する質問にも丁寧に返信しているのです。
1万件を超えるやりとりの結果、寄付者の7割がリピーターとなりました。また、「旅行先に天童市を選びます」という声が届くなど、町のファンがどんどん増えています。
ふるさと納税を通じて、新たなつながりをつくることに成功しました。
『チョイス自治体職員大賞(U30 新人賞)』を受賞した北海道・北広島市の白水さんは、地域の食べ物や、その背景にいる人々の想いをSNSで発信しています。
担当になった当初は、北広島市の魅力の伝え方について悩んでいましたが、生産者の熱い想いでできた地域の直売所を訪れた際に、彼らのこだわりや商品への想いに感銘を受けました。商品への愛情はもちろん、生産者同士で商品のコラボレーションをし、町の未来のために行動していたからです。
「生産者さんの情熱を全国に広めたい。町のファンを増やしたい。北広島市には素晴らしいものがあった!」
そう実感した白水さんは、生産者の方とともにSNSや動画も活用し、食べ物の美味しさだけでなく、届いた後の楽しみ方などにもフォーカスして発信を続けました。その結果、北広島市にしかない「美味しいものと人が集まる直売所」ができたのです。
■熱い自治体職員×「ふるさと納税」の可能性
今年もふるさと納税によって地域に変化が起こり、いくつもの素晴らしいストーリーが生まれました。株式会社トラストバンク会長兼ファウンダーである須永氏は、イベントに際してこう語ります。
「『ふるさとチョイス』は、ふるさと納税の裏側で起こっているできごと、そして頑張っている自治体職員にフォーカスしたい。そして、それを多くの人に知ってもらいたいという想いでアワードを開催しています」
ふるさと納税には、地域産業の活性化や生産者と寄付者との橋渡し、地域のファンづくりなど、さまざまな活用法があります。
そして、そこには、アイデアを出して実行し、地域の課題に立ち向かう自治体職員の存在があるのです。
福井県・坂井市の小玉さんは、受賞後に「これからは全国の担当者の皆さんとともに、より良い制度にしていきたい」とコメントしていました。
ふるさと納税が、自治体職員同士のつながりのきっかけにもなれば、その「つながり」がさらなる活用法や思いがけない効果を生み、地域の未来を拓いていくことが期待されます。
ふるさとに対する自治体職員の熱い想いこそが、地域を元気にする特効薬なのではないでしょうか。