日本人はアメリカからの独立を望まなかった 〜 三島由紀夫が叱った現代日本④
日本人は豚になる〜三島由紀夫の予言
■無視された三島の主張
三島は言う。
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われわれはもはや、根本的な改革の時代を生きてゐないと言はねばなりません。なぜなら、憲法改正のはてには再軍備強化によるアメリカ化が、あるひは左翼の言葉でいへば、アメリカ的独占資本主義化が、ますます進むおそれもあり、また憲法自らは、相変はらず偽善的なただ乗り主義と、肩身の狭いやうにみえる防衛義務と相携へていかねばならんといふ跛行(はこう)的状況の永続を意味し、われわれが矛盾に耐へるのをおそれれば、みすみす外国の術中に陥り、われわれが矛盾を甘受すれば、知らない間に精神の弛緩状態に陥つて、ますます現状維持の泥沼に沈むかもしれないからです。(「70年代新春の呼びかけ」)
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三島は防衛問題について、日本にとっての「武器と魂」の関係に立ち戻ることが必要だと考えた。三島が憲法改正を訴えたのは「日本のカルチャーと西洋のシビライゼーションとの対決の問題」を明らかにするためだった。
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私は九条の改廃を決して独立にそれ自体として考へてはならぬ、第一章「天皇」の問題と、第二十条「信教の自由」に関する神道の問題と関連させて考へなくては、折角「憲法改正」を推進しても、却つてアメリカの思ふ壺におちいり、日本が独立国家として、日本の本然の姿を開顕する結果にならぬ、と再々力説した。
(中略)
その代りに、日本国軍の創立を謳(うた)ひ、建軍の本義を憲法に明記して、次の如く規定するべきである。
「日本国軍隊は、天皇を中心とするわが国体、その歴史、伝統、文化を護持することを本義とし、国際社会の信倚(しんい)と日本国民の信頼の上に建軍される」
(中略)
自国の正しい建軍の本義を持つ軍隊のみが、空間的時間的に国家を保持し、これを主体的に防衛しうるのである。現自衛隊が、第九条の制約の下に、このやうな軍隊に成育しえないことには、日本のもつとも危険な状況が孕まれてゐることが銘記されねばならない。(「問題提起」)
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こうした三島の主張は完全に無視されたと言っていい。
なぜか?
日本人は独立を望まなかったからだ。
(適菜収著『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』(KKベストセラーズ)より再構成)
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