アメリカに海兵隊駐留継続を〝おねだり〟した日本 〜 三島由紀夫が叱った現代日本⑤
日本人は豚になる〜三島由紀夫の予言
「伊勢の大神宮が二十年毎に造り替へられる制度は、すでに千年以上の歴史を持ち、この間五十九回の遷宮が行はれたが、これが日本人の伝統といふものの考へ方をよくあらはしてゐる。西洋ではオリジナルとコピイとの間には決定的な差があるが、木造建築の日本では、正確なコピイはオリジナルと同価値を生じ、つまり次のオリジナルになるのである」と三島は言った。しかし、それは伝統を守る気概のある日本人が存在する限りにおいての話である。そして現実には精神の豚が豚を担ぎ上げ、国家の中枢に火を放ったのである。三島由紀夫は日本の行く末を正確に予言していた。作家適菜収氏が新刊『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』でそのすべてを明らかにする。
■日本人は豚になる
三島は日本の将来を危惧した。
そして警告を発した。
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私はこれからの日本に大して希望をつなぐことができない。このまま行つたら日本はなくなつてしまうのではないかといふ感を日ましに深くする。日本はなくなつて、その代はりに、無機質な、からつぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであらう。それでもいいと思つている人たちと、私は口をきく気にもなれなくなつてゐるのである。(「果たし得てゐない約束」)
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三島の警告は外れた。
もちろん悪いほうに。
日本はすでに経済大国ですらない。
憲法の恣意的な解釈、公文書の改竄、データの捏造、日報の隠蔽などがまかり通る三流国になっている。無機質でからっぽであり、卑劣で貧相で抜け目しかない。
ついに日本政府は「北方領土」という言葉を使うなと言い出した。すでに二〇一九年版の外交青書で「北方四島は日本に帰属する」との表現が削除されていたが、安倍と周辺の一味は売国どころか、上納金と一緒に国土をプーチンに献上してしまった。
国を破壊する勢力を、国民の多数が七年八カ月間も放置した結果である。
バカがバカを担げば、当然バカな国になる。
そしてこの先もバカ路線は続くのだろう。
三島は言う。
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アジアにおける西欧的理念の最初の忠実な門弟は日本であつた。しかし日本は近代史をあまりに足早に軽率に通りすぎ、まがひもののファシズムをさへ通りすぎて、今や西欧的絶望の仲間入りをして、アメリカを蔑(さげす)んだりしてゐるのである。
(中略)
日本はほぼ一世紀前から近代史の飛ばし読みをやつてのけた。その無理から生じた歪みは、一世紀後になつてみじめに露呈されたが、世界各地の後進諸国で、今や近代史の飛ばし読みがはじまつてゐる。一度動きだしたら、もうゆつくり読んでゐる暇はないのだ。(「亀は兎に追いつくか?」)
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日本人は近代を理解しなかった。現実から目を背け続けた。
近代がわからないということは、国家(ステート)も国民(ネイション)もわからないということであり、保守(反理想)も右翼(復古)も左翼(近代主義)もわからないということだ。
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