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アメリカに海兵隊駐留継続を〝おねだり〟した日本 〜 三島由紀夫が叱った現代日本⑤

日本人は豚になる〜三島由紀夫の予言

■日本人はその一日一日ダメになつていく

 平成の三〇年間にわたる「改革祭り」により、日本は焦土と化した。特にその総仕上げと呼べる安倍政権は精神面においても完全に日本を破壊した。元駐日米大使のウォルター・モンデールは、一九九五年の米軍普天間飛行場の返還交渉で、日本側が米海兵隊の駐留継続を望んでいたと暴露している。戦後の欺瞞も行き着くところまで来た。

ウォルター・フレデリック・モンデール(第24代駐日アメリカ合衆国大使)

 三島は続ける。

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 二十年目毎の改築と遷宮、これは実に象徴的である。終戦後十五年目あたりから、もうすつかり死に絶えたと誰もが思つてゐた古い日本思想が、あなどりがたい力で復活して、若い世代の一部を惹(ひ)きつけてゐる。一九六〇年に、十五年ぶりでハラキリが復活した。岸内閣の政治に憤慨した或る僧侶が、官邸の前で切腹したのである。これから又たびたびハラキリが出て来ても、おどろくには当たらないのである。サムラヒもやがて復活することであらう。(同前) 

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 ハラキリが衝撃を与えた時代は終わった。

 今ではせいぜいドキュメンタリー映画でノスタルジーとともに消費されるだけである。

 サムラヒは復活しない。

 むしろ私は三島のこちらの文章に共感する。 

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 今この危機感が全然ないといふやうな時代になつてきて、今、世界中で一番呑気なのは日本かもしれないんですが、日本に果たして、かういふ危機がもし生じた場合、対処するやうな大きな精神的基盤があるだらうか。いや、日本人は大丈夫だ、日本人といふのは放つておいても、いざといふ時にやるさ。ところが、放つておくうちにですね、お腹の脂肪が一センチづつだんだんだんだん膨らんでくるのが、皆さんの体験的事実としてご存じだと思ふんです。そして、人間といふのは豚になる傾向もつてゐるんです。

 私は今日人間だと思つても、明日自分が豚になるかもしれないといふ恐怖でいつも生きてきた。やつぱり豚にならないためには、そして脂肪が蓄積しないためには、絶えず精神を研ぎすまし、例へば日本刀を毎日磨くやうに、磨ゐていかなきや人間てのはダメになると。日本人はその一日一日ダメになつていくといふことに気がつかないんぢやないか。(「我が国の自主防衛について」) 

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 日本人は豚になった。

 精神の豚が精神の豚を担ぎ上げ、一日一日ダメになっていった。

 豚はどう転んでも豚である。

 われわれ人間ができるのは正気を保ち、豚と距離を置くことだけだ。

 

適菜収著『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』〈KKベストセラーズ刊〉より再構成)

 

 

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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