ロボコン伝統校、小山高専のチーム力
アイデアはチームワークと伝統から
『闘え!高専ロボコン ―ロボットにかける青春―』より紹介したい。
◆不完全燃焼感を晴らす!
小山高専は、女子学生中心のチームと、「交流ロボコン」で活躍した3年生中心のチームで挑む。
女子学生チームのリーダーは、2016年、「ミーアキャット」で関東甲信越地区を制した4年生の福林さんが務める。
「去年は地区大会を終えた時点で不完全燃焼感がありました。自分が考えたアイデアが通ったらもう1年やろうと思っていました」
不完全燃焼感の原因は、アイデアを磨ききれなかったという思いにある。
「勝ちにいくロボットをつくるか、アイデアが光るロボットをつくるか。去年はどっちつかずになってしまいました。今年は完全にアイデア勝負でいきます」
今年のアイデアの核になるコンセプトは、チームメンバーの仲村夏生さん(機械工学科3年生)と一緒につくり上げた。
仲村さんは昨年、ジンベエザメの森田さんのチームでメンバー・操縦者を務め、全国大会でピットクルーも経験した。親御さんの影響で小さなころからロボコンを観始め、すでに4歳のときに会場で観戦していた記憶があるという「サラブレッド」だ。
発想のヒントは、「ロボットは何らかの生き物を模したものとする」と規定する「装飾」に関するルールのなかにあった。
小山高専は伝統的に、ロボットにキャラクター性を持たせ、装飾・デザインでロボットの機能を体現させる。
昨年の長く伸びるミーアキャット、大きな口でブロックを飲み込むジンベエザメがそのいい例だ。
今年の女子チームのアイデアも、モチーフとなる「生き物」と、ロボットの機能が見事につながっている。さらに、試合に登場する「生き物」たちをつぐストーリーも練られている。ここでそのアイデアを記せないのが惜しいほどだが、今年の女子チームのロボットは、きわめて「小山高専らしい」仕上がりになりそうだ。
3年生中心のチームは、交流ロボコンで優勝した塚越さんと、交流ロボコン大賞を獲得した原田さんが、「夢のタッグ」を組む。こちらはロボットの既成概念を超えようという果敢な発想で、最終的にどのようなロボットに仕上がるのかが楽しみだ。
この2チームを、昨年の全国大会出場チームのリーダー・松野さんが、「統括リーダー」という役割で全面的にサポートする。
今年の小山は、両チームの要所に、昨年の大会でメンバーを経験した3年生・4年生を配することができた。さらに、ピットを経験したメンバーもそのまま残っている。昨年は3年生以上のメンバーが少なく、A・B両チームの16名のメンバーとピットクルーのなかで2年生以下が13人、メンバーやピットで大会を経験していたのは森田さんと福林さんの2人しかいなかった。それと比べると、今年は圧倒的にチームとしての経験値が高まっている。
「去年は夏休みに入ってようやく本格的に製作を始められましたが、今年は7月に入って製作がかなり本格化しています」と福林さん。
アイデアにも切れがあり、製作も順調に進み始めている。
〈『闘え!高専ロボコン ―ロボットにかける青春―』より構成。本書では写真でふりかえるロボコンの30年史も紹介されている〉