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岐阜県岐阜市【美濃和紙と長良川が育む伝統工芸】昔ながらの製法を今に伝える、美濃和紙の里を訪ねる《連載その⑤》最終回

長良川に育まれた伝統工芸が時代を超えて輝きを取り戻す


 清流・長良川の流域には、古くから独自の文化が育まれてきた。
「美濃和紙」とそれを使った伝統工芸も、長良川から恩恵を受け発展してきた歴史がある。
 日本のものづくりの原点として、今も人々の心を潤している。
 今も連綿と昔ながらの製法を伝えている、和傘職人の元を訪ね、その「匠」の技を見せてもらうことにした。


■和傘、提灯など、職人の手仕事を体感する

「長良川てしごと町家CASA」を訪ねた。

 ここは岐阜和傘専門店や活版印刷工房、撮影スタジオなどが同居する複合施設で、和傘や提灯を実際に見て、買うことができる。不定期で和傘や提灯づくり体験も行っている。

 築100年の町家を改装した店内は、色とりどりの和傘が飾られていた。まるで花開くような美しさだ。

 和傘職人の田中美紀さんに最終仕上げである「糸かがり」を見せていただいた。

「この傘は長良川流域の職人たちの手仕事が詰まったこだわりの逸品です。美濃手すき和紙、藍染、拭き漆といった分野の職人たちが、それぞれ持てる技術を存分に奮っているのです」

 そう言いながら田中さんは慣れた手つきで小骨に針で糸を通していく。

 同心円状に描かれていく模様には、岐阜和傘の特徴である「霞かがり」の模様が見て取れる。いつまでも眺めていたい美しさだ。

藍染めした和紙が宇宙を思わせることから「ギャラクシー」と命名。毎回染め色、染模様が異なる一点ものの逸品だ。販売価格13万2000円。

和傘職人の田中美紀さん(高橋和傘店)。ギャラクシーについて「和紙の染め色はもちろん、要となる轆轤(ろくろ)(傘の骨を束ねている部品)や持ち手を拭き漆で仕上げて高級感のある仕上がりにしました」。

長良川てしごと町家CASA

岐阜県岐阜市湊町29  
電話/090-8335-9759(和傘CASA)
営業時間/11:00~18:00
休業日/火曜・水曜

長良川てしごと町家CASA内の「和傘CASA」 では、和傘を開いて選べるように店内のスペ ースを広く取っている。最近はオンライン販売も人気とか。

また、同店では美濃和紙を使った提灯も販売。提灯は伝統的な「岐阜提灯」はもちろん、現代の暮らしにマッチするモダンなデザインも提案している。

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美濃手すき和紙は岐阜県が世界に誇る伝統工芸であり、宝物です

岐阜県知事・古田肇

 美濃手すき和紙は、薄いながらも強く、美しい紙で、1300年以上の歴史があります。その最高峰である本美濃紙の製作技術は、地域に生きる人々の手で大切に受け継がれ、2014年にはユネスコ無形文化遺産に登録されました。

 そして、来年開かれる東京オリンピック・パラリンピックでは、入賞者に贈られる全ての表彰状に美濃手すき和紙が採用され、オリンピアン・パラリンピアンの手を通じ、世界各国に渡り、伝えられていくことになります。

 まさに、美濃手すき和紙は岐阜県が世界に誇る伝統工芸であり、宝物です。

 そして、長良川流域には、今回紹介されている郡上本染や岐阜和傘の他にも関の刃物、鵜飼など先人の手で受け継がれてきた伝統が息づいており、次世代を担う若い職人が、新しい発想も取り入れながら伝統を未来へとつなげていこうと奮闘しています。

 皆さんも是非、職人の技が息づく岐阜県を体感してみませんか。

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