書店員「うすら寒くなる」とまで言わしめた傑作の一冊
本のプロが読む、森博嗣『道なき未知』(紀伊國屋書店 吉野裕司さん)
「森博嗣は努力の人。読み進めるうちに成功のエッセンスが見えてくる」――紀伊國屋書店新宿本店・仕入課課長 吉野裕司
「楽して成功したい」そう願ってしまう私のような横着者にとって、本書は不親切である。
冒頭から、他人が切り拓いた道を歩いても成功しないと、甘い期待は撥ねつけられる。
成功のノウハウ本などこの世に存在しないと、自己啓発本を商っている書店員としては、うすら寒くなる発言まで飛び出す。
大学で研究者として働き、このままでは自分がやりたいことに必要なお金は得られないと、39歳で一念発起して作家になった人の言葉である。今は、刊行点数も減らし、とある国で広大な庭園で自作の機関車を走らせている。天才なのでは? の一言で片づけたくもなるが、読むとわかる。努力の人である。こつこつ積み重ねる、仮設を構築する、楽観しない、森博嗣の成功のエッセンスが沢山詰まっている(勿論、同じ道は歩けないが!)。
不親切と割り切って、あくまで参考に、と読み進めると、あれ!?案外タメになるじゃないかと実感させられる。
(紀伊國屋書店新宿本店・仕入課課長 吉野裕司)
本作の内容の一部は以下でお読みいただけます。
【第38回 言葉より数を見る】
【第39回 「甲斐」VS「やすい」】
【第40回 掃除をした人は綺麗に見える】
【第38回 言葉より数を見る】
【第39回 「甲斐」VS「やすい」】
【第40回 掃除をした人は綺麗に見える】
(著者プロフィール)
森博嗣 もり・ひろし
1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。以後、続々と作品を発表し、現在までに300冊以上の著書が出版され人気を博している。小説に『スカイ・クロラ』、『ヴォイド・シェイパ』、『ダマシ×ダマシ』、『青白く輝く月を見たか?』など。エッセィに『自分探しと楽しさについて』、『小説家という職業』、『科学的とはどういう意味か』、『孤独の価値』、『作家の収支』、『夢の叶え方を知っていますか?』などがある。