「ファウルで流れを断ち切る」鹿島にあるもう一つの判断【岩政大樹の現役目線】
岩政大樹が書き下ろす選手と監督の距離感
■岩政大樹「現役目線」第31回
カルチャーショックだったファウルの有効性
鹿島には、日本の他のチームではあまり聞かれない指示が一つあります。
「プレーを切れ」
という指示です。
監督からも頻繁に言われるのですが、それが染み付いた選手たちの間でも試合中によく「切れ」と声が飛びます。
「プレーを切る」とは簡単に言うと、「ファウルをして相手の攻撃の流れを断ち切る」ということです。
相手がカウンターを成立させたり、チャンスを構築しようとする前に、ファウルをしてプレーの流れを止め、一度リセットしてしまうのです。
鹿島に入団した頃で一番のカルチャーショックでした。それまで僕は「ファウルはしてはいけない」と言われて育ちました。僕はプレースタイルから、比較的激しくいくことを求められてはいたものの、それでも「ファウルをすることも時に有効」という発想は持ち合わせていませんでした。
そのことを周りに正直に話すと、それが『岩政「ファウルすることも大事だと教わった」』と記事になり、クラブスタッフから注意を受けたこともあります。
今でも言葉にすることが難しい内容ではありますが、挑戦してみますね。
大前提からお話ししますが、ファウルすることを推奨しているわけではありません。特に、相手選手を怪我させるような悪質なファウルは根絶されなくてはいけません。
ここでお話しするファウルは、それとは全く種類の違うものです。そもそもそのような悪質なファウルはイエローカードやレッドカードが出されるもので、それがチームにとって有効なはずがありません。
そして何より、「ファウルする」と一択になっている時のファウルは決していいプレーになり得ません。
サッカーにおいていつも大事なことは「判断する」こと。ファウルすべきか、すべきでないか。それも最後の瞬間まで「勝つこと(守ること)」から逆算して判断することが大切なのです。
それは僕自身の経験からもよく理解しているつもりです。
というのも、鹿島に入ってすぐの頃、それまで聞いたことのなかった「プレーを切れ」の指示に、そのやり方がよく分からず、「ファウルする」、もしくは「ファウルしない」の一択でしかプレーできなかったので、イエローカードをいくつもいただき、相手にうまく対応することができなかったのです。
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