日本語の破壊者を礼賛してきた日本人~三島由紀夫が叱った現代日本⑩
日本人は豚になる~三島由紀夫の予言
桜を見る会事件が大きく動き始めた。「安倍晋三後援会」が主催した前夜祭を巡り、政治資金規正法違反や公選法違反(寄付行為)の疑いで刑事告発が相次いでいたが、東京地検特捜部は安倍の公設第1秘書らを任意で事情聴取。後援組織への接待、反社会勢力との深い関係など、論点はいくつかあるが、絶望的なのは言葉の軽さである。安倍晋三は国会で延々と嘘をつき続け、「(桜を見る会の参加者を)募集ではなく、募っているという認識」と答弁した。言葉の破壊はどこに行き着くのか。作家適菜収氏が新刊『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』でそのすべてを明らかにする。
■日本語の破壊者
安倍晋三という精神の幼児が7年8カ月にわたり日本語を破壊し続けた結果どうなったのか。歴史の改竄、意味のすり替え、言葉の破壊がまかりとおる異常で卑劣な国になってしまった。
ジョージ・オーウェルの『一九八四年』の主人公の仕事は、「党」にとって都合が悪い過去の事実を抹消することである。語彙の削減、意味の反転、略語の作成、イメージの置き換え……。たとえば強制収容所を「歓喜キャンプ」と言い換える。平和省は戦争を維持し、豊富省は国民から搾取し、真理省は歴史を改竄し、愛情省は尋問と拷問を行う。
安倍政権下では、移民は「外国人材」、家族制度の破壊は「女性の活用」、惨禍を招くグローバリズムは「積極的平和主義」、秩序破壊のための実験は「国家戦略特区」、不平等条約TPPの締結は「国家百年の計」、南スーダンの戦闘は「衝突」といった言葉で誤魔化されている。事実そのものが抹消・捏造されるなら、やがて歴史の解釈すら不可能になる。
安倍の「募集ではなく、募っている」というのも、すでに「言葉」の意味が蒸発しているということだ。
「デフレではないという状況をつくりだすことができたが、デフレ脱却というところまで来ていないのも事実」
「対話による問題解決の試みは無に帰した」と言ったかと思えば、「私は北朝鮮との対話を否定した事は一度もありません」と言い出す。