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中国山地ローカル線の旅

新幹線なら35分で行けるところ、丸1日かけて遠回り

 新見からは、芸備線をたどる。1時間ほどの待ち合わせで、13時1分発。姫新線と同じく、キハ120形1両だった。早朝の始発列車の次の2番列車。閑散路線という噂だったが、列車本数が極端に少ないせいか、姫新線よりも多くの人が乗ってきた。といっても10人ほどなので、全員が座れる。もっとも、ボックス席はやはり4つしかなく、進行方向窓側に座るには、早めにドア前に立っていないと無理だ。そこは慣れたもので、ここでも首尾よく理想の席をゲットできたのである。

 芸備線の列車といっても、新見から最初の2駅は伯備線を走り、備中神代からが本来の芸備線である。姫新線と同じような長閑な田園地帯をのんびり進んだ後、だんだんと山中に分け入っていく。中国山地のローカル線は、どこも似たような感じだ。車窓に強烈なインパクトはないけれど、心休まるのどかさに惹かれる。線路は神代川と中国自動車道に並走している。道路が立派であれば、芸備線に勝ち目はなく、客離れがすすみ苦戦している。

 野馳駅までが岡山県で、広島県に入り最初の駅は東城。ここで折り返す列車もあり、この先は1日に列車が3往復しか走らない超閑散路線となる。1日平均の通過旅客人員8名というとんでもなく少ない数字だ。2018年3月末で廃止となる三江線でさえ50人くらいの数字である。よくも、廃止の話が出ないものだ。

 もっとも、この日は10人以上乗っていた。廃止となる三江線詣でに三次まで行く人が、ついでに別のローカル線を利用しているのだろうか? そのせいで若干混んでいるのかもしれない。

 姫新線同様、時速25キロでのろのろ進む区間が何カ所もある。列車本数が少なすぎるせいか、路盤は朽ち果てるように草茫々、線路際の枝が車両にぶつかり、ゆらゆら揺れながら低速で進む。

芸備線の備後八幡~内名にて。低速で走る区間あり

 山の中のジャンクション備後落合駅で列車を乗り換える。木次線との接続駅でもあるので、3つの列車が揃うと、一瞬賑わいを取り戻す。列車と言っても、すべて1両のキハ120形だ。紛らわしいので、運転士さんに行先を確認して乗り換えた。

備後落合で右の車両から左の車両に乗り換え

 備後西城、備後庄原と駒を進め、夕陽に向かうようにして三次へ向かう。備後西城駅にはヘアサロンが駅舎内にある。立寄る時間はないけれど、ホームに大きな看板が出ていたので思い出した次第である。福塩線との乗換駅塩町を過ぎると、盆地の中をひた走り、三次へラストスパートする。

 三次からは、この日の行程最後の列車に乗り込む。これまでの1両だけのキハ120とは異なり、2両編成の快速列車「みよしライナー」だ。小駅をいくつも通過し、加減速もスムーズだ。特別料金不要列車にもかかわらず、丸一日キハ120ばかり乗っていたので、この列車が特急列車のような錯覚を起こしてしまった。

最後は快速みよしライナーで広島へ

 次第に日は暮れ、広島着は17時34分。すっかり夜になっていた。一日がかりの長い旅は終わったが、大変充実した列車旅だった。

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