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金正恩は力づくで「中国の影」を葬った

金正男という最後のカード シリーズ!脱中国を図る北朝鮮⑤

中国の影を葬り去るため

 核とミサイルによる先軍政治を国策とした金正日体制を継承し、さらにそれに拍車をかける金正恩体制について中国は、北朝鮮の経済的な自立は見込めないと分析しています。事実、北朝鮮の政権は金正日体制以来、経済の八割を中国に依存しているのが実情です。

 経済成長最優先の政策を採る中国にとって、隣国である北朝鮮の安定は必要不可欠です。

 もし、北朝鮮に混乱が生じた場合、中国は「金正男氏擁立」も重要な選択肢の一つにしていました。中国式改革開放を推し進めようとしていた張成沢が、金正男氏擁立の計画を中国に話したことは前述した通りです。

 中国にとって金正男氏の存在は、最大にして最後の北朝鮮圧迫のカードであったのです。中国は、金正恩体制が破綻した際には、思想的に近い金正男氏を平壌に送り込み、北朝鮮の指導者として擁立する計画を立てていました。

 それに対して金正恩が決断したことは、張成沢をはじめ金正男氏までも含めた中国の影を葬り去ることだったのです。

(『北朝鮮の終幕』より構成)

〈シリーズ!脱中国を図る北朝鮮⑥は2日後に配信します。〉

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田中 健之

たなか たけゆき

 昭和38(1963)年、福岡市出身。歴史家。日露善隣協会々長。拓殖大学日本文化研究所附属近現代研究センター客員研究員を経て、現在、岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員、ロシア科学アカデミー東洋学研究所客員研究員、モスクワ市立教育大学外国語学部日本語学科客員研究員。 昭和58(1983)年に中国反体制組織『中国の春』の設立に関与し、平成元(1989)年6月4日に生じた天安門事件を支援、亡命者を庇護すると共に、中国民主運動家をはじめチベット、南モンゴル、ウイグルの民族独立革命家と長期にわたって交流を重ねている。 平成3(1991)年、ソ連崩壊と共にモスクワに渡り、ロシア各界に独自の人脈を築く。 一方、幼少より玄洋社、黒龍会の思想と行動に興味を抱き、長年、孫文の中華革命史およびアジア独立革命史上における玄洋社、黒龍会の歴史的、思想的な研究に従事、それに基づく独自の視点で、近現代史、思想史を論じている。 玄洋社初代社長平岡浩太郎の曾孫に当たり、黒龍会の内田良平の血脈道統を継ぐ親族。 著書に『昭和維新』(学研プラス)、『靖国に祀られざる人々』(学研パブリッシング)、『横浜中華街』(中央公論新社)、『実は日本人が大好きなロシア人』(宝島社)その他、共著、編著、雑誌など多数。



 


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