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地方で生き残る大学と消える大学、その見極め方

都会で消える大学、地方で伸びる大学①

◆生き残る地方大学、その条件

 収容定員充足率に注目して大学を見てみると、東京の知られた中堅私立大でも定員割れをしている大学が出始めた一方で、地方でも100%を超え続けている大学は何校もある。もちろん地方は、人口流出の影響もあり、大幅定員割れの危機にさらされ続ける私立大学も多いが、その中で受験生を集める魅力を生み出しているのは何なのか。木村さんは次のように答える。

「地方の大学が生き残るために必要なのは、地域連携に積極的に取り組むことだと私は考えます。実際にそれをやっている大学は、今適正の学生数を確保し着実に実力を伸ばしてきています。たとえば群馬県の共愛学園前橋国際大学は、文科省から『COC+』プロジェクトの代表校に選定されています。『COC+』とは「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」のことで、地域活性化の中核的存在の大学として地方の雇用創出に取り組む、という意味合いを持っています。この大学は、以前は定員割れでしたが、街づくりやボランティア活動など、地域連携事業に取り組むことで地元の高校からの評価が高まり、入試でも資格を重視し、安易に推薦入学の成績基準を下げて受けやすくすることはしないで、着実に大学の力を伸ばすことに成功しました」。

 また、長野県の松本大学は開学以来、学生が地域と積極的に関わり合いながら学べる環境を作ってきた。
「松本大学では2002年からアクティブラーニングを導入しました。教室の講義型授業でなく、郊外で実習活動や討論型授業をして、学生たちの自発性を重視しています。今ではアクティブラーニングは多くの大学で取り上げられていますが、当時は珍しかったですね。
 たとえば、松本市を訪れた外国人観光客への対応について、総合経営学科の学生がおもしろいアクティブラーニングをしていました。地元の松本城を案内するときに、どのような点をアピールするのかについて、日本人なら『日本最古の国宝の城』で、『白と黒のコントラストが特徴的』などと言えばいいかもしれませんが、日本の歴史を知らない外国人にとっては国宝と言っても魅力を感じないかもしれない。外国人観光客にいかにユーモラスに松本城の魅力を紹介するのか、実際にアンケートをとるなどして考察していたんです」。

 上記は観光の分野における一例だが、松本大学のこのようなフィールドワークは、一般企業や行政、医療機関、環境や福祉など多岐にわたる分野で実施されている。最近では健康スポーツ学科の学生が、高齢者の健康寿命を延ばす健康運動指導士の実習を地域で展開している。これも地域貢献だろう。

 この3年間、収容定充足率が100%を超えている四国の松山大学も地域連携で知られる。えひめスイーツプロジェクト活動(愛媛県)、おもてなし日本一のまち松山支援事業(松山市)、遍路マップ制作事業、薬膳商品開発事業など多彩なプロジェクトで、地域と連携をしたり、貢献活動を繰り広げている。

「地域が抱える問題を知り、解決のための方法を考える。それは、地元の人たちがやりたくても忙しくてなかなかできないことですから、大学生がやってくれると助かりますし、客観的で信頼も厚くなります。こうした地域連携ができれば、地方の大学は生き残っていけます」。

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木村 誠

きむら まこと

1944年、神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部新聞学科卒業後、学習研究社に入社。『高校コース』編集部などを経て『大学進学ジャーナル』編集長を務めた。現在も『学研進学情報』などで活躍。著書に『大学大倒産時代』『消える大学 生き残る大学』『危ない私立大学 残る私立大学』『就職力で見抜く! 沈む大学 伸びる大学』(以上、朝日新書)『福井大学はなぜ就職に強いのか』(財界展望新社)など


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