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フランス革命政府はMMTを実践していた!【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」29

エドマンド・バーク(1729-97)。アイルランド生まれのイギリスの政治思想家、哲学者、政治家。「保守思想の父」として知られる。

◆保守主義の古典、文庫化

 1790年、『フランス革命の省察』という本がイギリスで刊行されました。

 著者は政治家であり、文人でもあったエドマンド・バーク。

 前年に始まったフランス革命を、さまざまな角度から痛烈に批判したものですが、保守主義の古典として名を残します。

 実際、バークが展開した議論には、刊行より230年を経た現在でも学ぶべき点が多々あるのです。

 

 この点に注目した私は、発表当時のインパクトを再現すべく原著を再構成した本を2011年に発表しました。

 題して『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』

 おかげさまで順調に版を重ね、このたびPHP研究所より文庫化される運びとなりました。

 

 今回の文庫化にあたっては、まえがき「フランス革命は終わっていない」を追加のうえ、内容がいっそう豊かになるよう訳注を充実させました。

 しかるに革命政府の経済政策について解説しているうち、面白い事実が浮かび上がってきます。

 なんとフランス革命政府は、最近話題になっているMMT(現代貨幣理論)に基づいた政策を、そうと自覚しないまま実践していたのです!

 

 フランス革命とMMTの関連について取り上げた本は、わが国はむろん、世界的にも今回の文庫版が初めてでしょう。

 古典に新たな輝きがつけ加わったというところですが……

 ならば、具体的にどの政策がMMTに基づいていたのか?

 そうと自覚しないまま実践されるなどということがなぜ起きたのか?

 

 これをご理解いただくには、MMTにおける貨幣観について、おさらいしなければなりません。

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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