フランス革命と貨幣観の革命【佐藤健志】
佐藤健志の「令和の真相」30
◆あんた、信用貨幣論の何なのさ?
商品貨幣論において、政府が発行できる貨幣の量は、保有する貴金属の量に制約される。
紙幣といえども、貴金属を使った貨幣と交換可能でなければならないからです。
他方、信用貨幣論において、政府が発行できる貨幣の量の制約条件となるのは、当の政府の信用のみ。
ここで言う「信用」は、「〈財やサービスの提供を受ける権利〉をいっぱい与えても、権利の行使に支障が生じないようにする能力」と解釈して下さい。
具体的にどんな能力なのかって?
「財やサービスの提供を受ける権利の総量」と、「提供可能な財やサービスの総量」の間のバランスを保つ、という能力です。
前者が後者を大幅に上回ると、財やサービスの価格がどんどん吊り上がってしまう。
早い話、インフレが過熱するわけですが、言い換えれば信用貨幣論において、貨幣発行の制約となるのはインフレ率だけなのです。
ただし厳密には、他の貨幣との交換比率、つまり為替の問題も考慮しなければならないものの、これは脇に置くことにしましょう。
すでに述べたとおり、信用貨幣論の正しさが広まったのは最近のこと。
ところが1789年に誕生したフランス革命政府は、財務総監のジャック・ネッケルが、貨幣に鋳造(ちゅうぞう)するための金や銀を、価格が割高であったにもかかわらず買いつけるなど、商品貨幣論に基づいた振る舞いを見せるかたわら、信用貨幣論に基づいた貨幣を流通させるという離れ業をやってのけたのです!
あんた、信用貨幣論の何なのさ?
私の新刊『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP文庫)に基づき、経緯をお話ししましょう。