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フランス革命と貨幣観の革命【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」30

◆あんた、信用貨幣論の何なのさ?

 商品貨幣論において、政府が発行できる貨幣の量は、保有する貴金属の量に制約される。

 紙幣といえども、貴金属を使った貨幣と交換可能でなければならないからです。

 

 他方、信用貨幣論において、政府が発行できる貨幣の量の制約条件となるのは、当の政府の信用のみ。

 ここで言う「信用」は、「〈財やサービスの提供を受ける権利〉をいっぱい与えても、権利の行使に支障が生じないようにする能力」と解釈して下さい。

 

 具体的にどんな能力なのかって?

 「財やサービスの提供を受ける権利の総量」と、「提供可能な財やサービスの総量」の間のバランスを保つ、という能力です。

 前者が後者を大幅に上回ると、財やサービスの価格がどんどん吊り上がってしまう。

 早い話、インフレが過熱するわけですが、言い換えれば信用貨幣論において、貨幣発行の制約となるのはインフレ率だけなのです。

 ただし厳密には、他の貨幣との交換比率、つまり為替の問題も考慮しなければならないものの、これは脇に置くことにしましょう。

 

 すでに述べたとおり、信用貨幣論の正しさが広まったのは最近のこと。

 ところが1789年に誕生したフランス革命政府は、財務総監のジャック・ネッケルが、貨幣に鋳造(ちゅうぞう)するための金や銀を、価格が割高であったにもかかわらず買いつけるなど、商品貨幣論に基づいた振る舞いを見せるかたわら、信用貨幣論に基づいた貨幣を流通させるという離れ業をやってのけたのです!

 

 あんた、信用貨幣論の何なのさ?

 私の新刊『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP文庫)に基づき、経緯をお話ししましょう。

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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