巧みの力と時間がつくり出す手延べ素麺の魅力

K　ぼくは韓国で生まれて育ったわけですが、日本で素麺を食べるようになって、大好きになりました。うちの両親も好きで、日本へ来ると必ず食べたいって言っています。奈良県の人たちにとって、素麺とはどんな存在なのですか？

池側　今でこそ飢饉とか不作とかなくなりましたけど、昔は農作物が取れないときのための保存食として必ず作られていたものです。なので、長く地元の人間にとってはなくてはならない食材ですね。

K　さきほど作っていただいた素麺もとてもおいしかったです。三輪素麺は、飛行機のファーストクラスでも提供されていると聞きました。三輪素麺ならではの魅力はどんなところにありますか？

池側　麺が細いということと、細くても煮て崩れることが少ないんです。そして、コシがあるというところが一番じゃないですかね。

K　そういう三輪素麺の魅力を守るために気を配っているのはどんなことですか？

池側　おいしさを大切にするといううえで、もっとも重要なのは、品質管理だと考えています。生産者は我々組合が認めた原材料しか使わないことが前提ですし、そのうえで、製造過程なども含めて、品質管理の勉強会を行なったり、規格に合っているかという検査、そして品評会など、いろんな事業をやっています。そして、「地理的表示保護制度」の認定を頂いたことも大きな励みになっています。

K　大神神社から始まった歴史や食文化を持つ三輪素麺を継承するためにはどのようなことを考えていらっしゃいますか？

池側　まず重要なのは、おいしいものを作るということだと思います。そうすれば、自然と消費者の方に買っていただける。やっぱり利益が上がらなければ、後継者もついてこないと思います。後継者がいなければ、伝統である素麺も守っていけないので。その点でも厳しい品質管理と若手育成を同時に行っていくべきだと考えています。

K　普段何気なく素麺を頂いていますが、あんなに様々な工程があり、そのなかで時間をかけて熟成をさせている。文字通り手間暇をかけて作られているということをもっと多くの人に知ってもらいたいと思いました。ひとつの素麺を作るためには、時間と巧みの力、人の力が必要だということ、それを知ったうえで食べるとさらにその味も違ってくるはずだから。

池側　素麺作りには、長年の経験と勘に頼るところが大きい。それが、機械にはできない手延べ素麺の良さんですよね。

Kの視点
　今回、三輪素麺の誕生にもフォーカスし、いろいろお話を聞きました。農作物が取れなくなった時の保存食として生まれた三輪素麺。1200余年という歴史のなかで、いかにおいしくするか、保存食に適したものを作ろうと、多くの人たちが知恵を絞り、三輪素麺の歴史は繋がれ、伝統食として愛される存在になりました。今度は三輪素麺を次の世代へ繋いでいくことになっていくわけです。

　職人たちが知恵を絞って、技を磨き、繋がれてきたものを僕らは今、生活のなかで、それを食べたり、愛でたり、使ったりしながら暮らしている。そして、伝統を守り、同時に激変する現代社会を生き抜き、また先の未来へと繋ぐために奮闘している方々とお会いできることの喜びを今回もまた改めて強く感じました。

奈良県三輪素麺工業協同組合

住所：奈良県桜井市三輪334-6
TEL：0744-42-6068
 HP：http://www.miwasoumen-kumiai.com/

 

PROFILE
Ｋ（ケイ）
1983年韓国ソウル生まれ。2005年デビューし、「Only Human」が大ヒット。以降もピアノ弾き語りのスタイルで、シンガーソングライターとして、Ｊ－ＰＯＰ界で活躍している。2014年タレントの関根麻里と結婚。昨年、第一子が生まれた。2017年2月22日(水)にビクター移籍第1弾シングル「シャイン」をリリース。ニューアルバム『Storyteller』を2018年1月24日に発売。
Ｋオフィシャルサイト　http://www.club-k.cc/