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「充実した人生は欲しくない」と思えるか

あなたの人生を知っているのは、あなた以外にいない 60歳からの「しばられない」生き方④

甘言をたらすインチキビジネスに騙されてはいけない

「いい人をやめれば人生はうまくいく」という人もいる。そんなばかな。人生がうまくいく方法などどこにもないし、それを知っている人など、この世にひとりもいるはずがないのである。

 人生に「こうすればこうなる」なんてことはない。それはインチキビジネス書や成功本の幼稚な手口である。だから、こうすれば金儲けができる、成功する、雑談力があがる、老後は豊かになる、人生は充実する、輝く、なんてことはないのだ。

 まあ、毎日酒浸りの生活をつづければ、体を壊し、いずれ死ぬぞ、ということはあるだろうが。人生にあるのは「こうするつもり」とか「やってみせる」という意志だけである。

 すべての甘言は疑似餌である。食えたものじゃないのである。「輝く」なんてバカ言葉を使っている時点で、すでにアウトである。

 わたしはそんな子ども騙しのエサにだれが食いつくかね、と思うが、おいしそうなエサだと食いつく人がいないわけではない。ウソでもいいから、夢や希望を与えてくれ、と思っている人である。ウソでもいいから、はなかろう、と思うが、そんな人はいるのである。 安くない金を払って本を買ったのだから、せめて夢や希望を与えろよ、本には秘策が書いているものだろ、でなきゃただの買い損じゃないか、というのだろう。

「わたしは老後のいまが人生で一番楽しいよ」という人がいてもしかたがない。本人がそういうのだから、止めようがない。

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勢古 浩爾

せこ こうじ

1947 年、大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に入社、 34年間勤続し、2006年に退職。以後、執筆活動に専念。 著書に『いやな世の中』(ベスト新書)』、『まれに見るバカ』(洋泉社・新書y)、『自分をつくるための読書術』(筑摩書房)、『定年後のリアル』(草思社文庫)シリーズ、『ウソつきの国』(ミシマ社)など多数。


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