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意外に知らない、高専ロボコンの裏側

地味に壮絶なロボットの闘い

NHK高専ロボコンが今年で30周年目を迎える。有明コロシアムで行われる全国大会を前
に、各高専はどんな激闘を繰り広げるのか。ロボットの重量制限や魔物が存在するともいわれる、全国大会の裏側をのぞく。書籍『闘え!高専ロボコン ―ロボットにかける青春―』(KKベストセラーズ)から一部紹介する。

◆高専ロボコンから見える仕事術

 

 ロボコンに挑む高専生のドキュメントを描いた、『闘え!高専ロボコン ―ロボットにかける青春―』(KKベストセラーズ)を読んだ。

 僕もサレジオ高専出身者だが、ロボコンにはノータッチ。友達のなかには、ロボコン出場者もいるので「アイツ、こんな大変なことやっていたんだ」と卒業して10年経つ今頃リスペクト。そして、校舎のエントランスに飾られていたロボット「歩くんです(2002年ロボコンにてデザイン賞を獲得)」のことを思い返す。

 ニッチな分野を扱った本ではあるが、伝えているのはチームワーク、事前準備の大切さ、リスク管理といった基本的なこと。高専ロボコンから見える仕事術とも読める。

「高専ロボコン」とは、高専の学生が参加するロボット版甲子園。地区予選を行い、勝ち抜いたチームが全国大会に参加できる。特殊なのはルールが毎年変わる点。ロボットを動かすゲームで争うことに変わりはないが、毎回行う競技が異なる。

 当然、ロボットを動かすアイデアも競技に合わせて考えることに。観客目線で考えればマンネリがなくて楽しいが、開発する高専生にとっては大変な大会なのだ。

 本著では2016年の第29回大会を取り上げる。

 普通は、トーナメントで優勝をしたチームが賛辞を得るもの。しかし「高専ロボコン」は異なる。最も栄誉がある賞「ロボコン大賞」が送られるのは、アイデア、技術、デザインが優れたロボットをつくったチーム。つまり勝敗は関係なく、あくまで「アイデア対決」がロボコンの醍醐味。

 強豪校になれば、強さと斬新さを持つロボットで挑む。優勝と「ロボコン大賞」のW受賞を狙う。

 また、痛いほど伝わるのが「高専ロボコン」の厳しさ。6月半ばにルールが発表され、10月には予選を迎える。制作に与えられる時間は少ない。高専ごとにノウハウも溜まってはいるが、うまくいかないことも多々。

 試合前の軽量でオーバーしてしまうチームもいる。ボクサー同様にムリな減量を短時間ですることになり、試合で動かない!なんてことも多々。

 甲子園と同様に魔物もしっかりと存在。前試合では、順調に動いていたロボットがピクリともしない。ステージ上で調整しているうちに試合終了。こんなカタチで、強豪校が敗退することもある。

 完璧なロボットをつくることは不可能に近く、どこで足元をすくわれるか分からない。ハラハラドキドキの怖さもある大会でもある。

 特徴的なロボットとの出会いも楽しい。「高専ロボコン」の特徴なのか、ロボットの名前はダジャレが多い。

「鶴THE塔(かくざとう)」「Fly Do ポテトS」「射抜け!わぶさめくん」などなど。開発秘話を読めば、俄然と興味もわく。会場に足を運び、肉眼で躍動するロボットを見たい!そんな気持ちになる読者も多いハズ。

 ちなみに僕の出身校「サレジオ高専」、第29回大会では地区予選1回戦負け。よってほぼ触れられることはなく・・・。ページをめくりつつ「がんばれ!後輩!」なんて想う。

『闘え! 高専ロボコン ―ロボットにかける青春―』は、母校愛のカケラすらない僕でも熱中。多少なりロボットに興味のある方には、オススメできる1冊だ。

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ヨシムラヒロム

よしむらひろむ

1986年東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。

イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。

2017年3月に単著デビュー作「美大生図鑑」を上梓。


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