スタイリッシュな門鉄デフのC57形SL撮影と電気式気動車初乗りの旅
門鉄デフを装着したSLを撮りに行く
■門鉄デフを装着したSLを撮りに行く
定期的にJR磐越西線の新津~会津若松間を走っている観光列車「SLばんえつ物語」を牽引している蒸気機関車C57形180号機に「門鉄デフ」が装備されて走るという情報を耳にした。
「門鉄デフ」というのは、蒸気機関車の前部、煙突付近の両側に屏風のように取り付けられている除煙板(デフレクター)の変形スタイルの一種である。元来は煙がボイラー周辺にまとわりつくのを防ぐために装備した除煙板であったが、その後の研究で、下半分を切り取っても効果が変わらないことが判明し、資材の節約もあってドイツで普及し、戦後、日本にも登場した。とくに九州にあった国鉄の門司鉄道管理局内の小倉工場でもっぱら改造されたため「門鉄デフ」「門デフ」の愛称で親しまれた。そのうちC57形やC55形に取り付けられたものは、機関車自体がスタイリッシュだったこともあり人気があった。九州とは縁もゆかりもない磐越西線で同型のC57形のデフを時々門鉄デフに取り換えて走るのは鉄道ファン向けのサービスに他ならないが、何ともカッコいいので、撮り鉄が集まるのも納得である。
今回、2020年は11月の週末に走る列車と12月初旬のクリスマス・トレインに限定して門鉄デフを装着するとリリースされた。最初は静観していたのだが、11月最初の週での走行の写真がSNSで大量に発表されると、その優美な走行写真を見せられるにつけ、これは無視するわけにはいかない。幸い、第2週の日曜は時間も取れたし、天気も快晴との予報。珍しく早起きして、東北新幹線「やまびこ」の客となって郡山を目指した。最近の撮り鉄は、列車に乗らないでクルマで追いかけ撮影するのが主流であるけれど、私はもう四半世紀以上、ペーパードライバーである。また、ローカル列車に揺られながらのんびり撮影したい気分なので、今回も郡山から磐越西線に乗り換えて、最初の撮影地の最寄り駅山都(やまと)を目指した。
郡山から乗った磐越西線の列車は会津若松行き。すべて電化区間を走るので電車である。しばらくこの路線に乗らないうちに特異な座席配置で2人掛けのクロスシートがお気に入りだった719系は消え、仙台エリアでお馴染みのE721系電車が登場。車内は4人向かい合わせのクロスシート車だ。この時期、「密」になるのは嫌だが、時間帯のせいか4人ぎっしり座ることはなく、せいぜい向かい側の席に一人、それも途中で降りていくと、無人になり、後半は4人席独り占めだった。磐梯熱海駅を過ぎると山越えになり、かつてスイッチバック駅だった中山宿も、その名残は記念のホーム跡を留めるのみだ。猪苗代駅あたりからは線路がくねくねとカーブしていることもあり、左に右にと磐梯山の麗姿が現れ、車窓を楽しませてくれる。
各駅停車なので1時間20分近くかかって会津若松駅に到着。ここで列車を乗り換える。定時到着だったので、6分の乗り換え時間は余裕だ。先頭車に乗っていたので、コの字形になっている行き止まり式のホームをぐるりと回って到着した1番線から3番線に急ぐ。今度乗るのは、快速列車「あがの」新潟行き。普通のディーゼルカーかと思っていたら、何と新型車両GV-E400系だった。
この車両は電気式気動車と呼ばれるものだ。従来の液体変速機を使うディーゼルカーと異なり、ディーゼルエンジンで発電した電気でモーターを回す。半分は電車と同じ機構なのだが、エンジン音を轟かせながら動き出すので、感覚的にはディーゼルカーと区別がつきにくい。かつて、JR小海線のハイブリッド車両に乗ったときは、静かに動き出すのに驚いたが、そのときのような感動はなかった。車内はゆったりとした座席配置でシートピッチは広いので快適だ。一方、四角張った車体は、まだ見慣れないせいもあって、あまり魅力を感じない。
列車は、会津若松駅を発車すると、広々とした田園地帯を快走する。揺れも少なく中々心地よい。いくつもの駅を通過し、途中塩川駅に停まっただけで喜多方駅に到着。ここまで15分である。喜多方を出ると、頭上の架線がなくなり非電化区間に入る。山越え区間になるので、エンジン音を響かせながら進む。新型車両は出力がありそうで、極度に減速することもなくスイスイとカーブしながら山道を登っていく。谷間に架かる一ノ戸橋梁を渡ると、スピードを落として山都駅に到着。喜多方の次の駅なのに10分以上かかった。列車からは何人も降りる。その数、20人近く。いずれもカメラや三脚を手にした鉄道ファンだ。クルマ利用ではない撮り鉄も少なからずいてホッとした。
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