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創価学会の「メディア戦略」は侮れない

『人間革命』の多様な展開 人間革命を読む⑤

「少年版」「劇画版」「劇場版」…まさしく何でもあり。創価学会の重要な物語である『人間革命』は様々な媒体で広められてきた。その経過を宗教学者の島田裕巳氏が『「人間革命」の読み方』でこう説明する。

小説『人間革命』のさまざまな版と多様なメディア展開

 小説『人間革命』の連載が、創価学会の機関紙である「聖教新聞」ではじまったのは1965年1月1日のことである。単行本の第1巻は聖教新聞社からこの年に刊行された。その後、70年には潮(うしお)出版社の潮文庫に入り、翌年には聖教文庫にも入っている。潮出版社は、直接宗教法人としての創価学会が運営しているものではないが、池田の著作など創価学会関係の書物を数多く刊行しており、創価学会系の出版社である。

「聖教新聞」での小説『人間革命』連載は、第11巻分が1980年8月10日からはじまったものの、11月20日分までで休載され、休載はそれから10年以上も続いた。再開されたのは1991年5月3日のことで、第12巻分の連載が終わったのは93年2月11日だった。第12巻の単行本は同年4月2日付で刊行されている。連載の回数は1509回にも及んだ。長期にわたる休載の理由については、後に検討する。

 この小説『人間革命』を、子どもにも読みやすい形に編集した「少年版」も刊行されている。それには2つの種類があり、片方は、磯永秀夫編『少年版人間革命』第1巻と第2巻で、あかね書房から1972年と73年に刊行されている。第1巻は、72年に聖教新聞社からも刊行されている。

 もう一つの少年版が宮崎忠尚編のもので、こちらは全5巻で1983年から85年にかけて刊行された。出版元は聖教新聞社で、1巻に元本の2巻分が収録されている。したがって、全5巻には元本の第10巻までが収められている。元本の第11巻と第12巻については少年版は存在しない。

 

 また、小説『人間革命』は劇画化されている。脚本は渡あきらで、劇画は石井いさみである。これは、「聖教新聞」に1988年から2002年まで毎週日曜日に連載された。その単行本は、1989年から2003年まで全56巻が、やはり聖教新聞社から刊行されている。

 この『劇画人間革命』をさらにアニメ化したものが、『アニメ人間革命』である。こちらは、創価学会系の映像会社シナノ企画と東映アニメーションの制作で、1995年から2004年にかけて全20巻のオリジナルビデオとして販売されている。

 小説『人間革命』は、このようにさまざまな形をとり、多様なメディアで展開されてきた。それも、創価学会の組織のなかで『人間革命』の物語がきわめて重要な意味を持っているからである。

『「人間革命」の読み方』より構成>

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  • 島田 裕巳
  • 2017.12.09