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日本の降伏を阻止したトルーマンの側近たち

トルーマンが直面していた二つのジレンマ シリーズ!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー⑤

二つのジレンマ

 たとえば、長谷川教授は、ソ連の対日参戦についてこう述べています。

 この本は、アメリカによる原爆の投下を、これまで論じられていたよりもはるかに広い国際的な文脈のなかで再検討しようと試みた。トルーマンは、ポツダム会談が始まるまでに、解決不可能な二つのジレンマに直面していた。第一に、ソ連参戦は、日本を降伏させるには必要だと考えながら、できればこれを阻止したいというジレンマ。第二に、日本にたいし無条件降伏を押しつけたいものの、しかし終戦を早めるためには無条件降伏を緩和して、立憲君主制という形での天皇制の存続を認めよとする圧力に押されているというジレンマ。この二つであった。(同、14頁)

 『日本は誰と戦ったのか』で詳しく説明していますが、エヴァンズらは『スターリンの秘密工作員』の中で、この二つのジレンマに対して、次のような指摘をしています。

外交経験がほぼないまま大統領になったトルーマン

 第一のジレンマについては、ポツダム会談当時、トルーマン大統領は「ソ連の参戦は、日本を降伏させるには必要だ」と考えていましたが、当時、米軍の幹部たちも国務省も「ソ連の対日参戦は不要」とする報告書を作成していました。ところが、それら複数の報告書は恐らく「側近たち」に妨害されてトルーマン大統領のもとには届かなかった、のです。

 トルーマンは「側近たち」によって「ソ連の参戦は、日本を降伏させるには必要だ」と考えるよう誘導されていたのです。

 第二のジレンマについても、国務省や米軍の幹部たちの大半は終戦を早めるためには無条件降伏を緩和して、立憲君主制という形での天皇制の存続を認めようとしていました。ところが、トルーマン大統領の「側近たち」が無条件降伏にこだわっていたため早期終戦が実現しなかったのです。

 この「側近たち」とは、大統領最側近のハリー・ホプキンス、モーゲンソー財務長官の側近ハリー・デクスター・ホワイト、大統領補佐官ラフリン・カリー、国務省高官アルジャー・ヒス、蔣介石顧問のオーウェン・ラティモアたちです。いずれも『日本は誰と戦ったのか』で詳しく取り上げている人物ばかりです。

 長谷川教授も触れていませんが、彼らにはある共通点があるのです。これら「側近たち」が実は「ソ連・コミンテルンの工作員や協力者だった(少なくとも疑いあり)」ということです。

『日本は誰と戦ったのか』より構成)

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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