現代に受け継がれる祭りの風習
同じ釜の飯を食うことには意外な意味があった!?
◆形を変え受け継がれる共同飲食の楽しみ
いまでも祭りを行う際は、中心となる実行委員などによる共同飲食が行われているだろう。しかし、ふらっと立ち寄って参加する、というレベルでは、奉納したものをいただくことは難しい。立ち並ぶ屋台のフードを食べ歩きする程度であり、これでは一体感が得られない。
しかし現代でも、九州のくんちのように共同飲食を行う祭りはある。また、高知の皿鉢料理のように、共同飲食の名残を感じさせるスタイルも現存している。皿鉢料理とは、大皿に刺身や焼き魚、煮物などを盛り合わせたもの。大人数での食事を前提としている。
こうした風習がなくなりつつあるのは残念ではあるが、その火が完全に消えたわけではない。現代人もホームパーティなど、何かにつけて皆で集まり、飲食を楽しんでいるではないか。鍋パーティやたこパ(たこ焼きパーティ)など、同じ鍋や鉄板を囲んでわいわいと騒ぐことはよくあることだ。
誕生日会や退職祝いなど、人は何かの節目になると集まり、宴会を催す。そこに神や先祖は奉られていないけれど、共同飲食の楽しみ、そして仲間意識を深めるということは、現代人にも形を変えて受け継がれている。
雑誌『一個人』1月号では、「春夏秋冬 庶民の歳時、今昔」と題した特集を展開している。祭りをはじめとする四季の行事や共同飲食の歴史を、民俗学・民族学研究者の神崎宣武さんが解説。さらに、各行事の変遷を写真や錦絵などとともに振り返っている。いまでは正月といえば初詣に行くのが当たり前になったが、その歴史は意外と浅い。そんなトリビアも紹介しているので、新年を迎える前にチェックを。
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