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【少人数学級】実現に向けた小さな一歩と、大きな譲歩

第57回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

少人数学級

■小学校で35人学級が段階的にはじまるが…

 約40年ぶりに、少人数学級の実現に向けて一歩前進した。財務省が導入に反対していた少人数学級を、文科省が押し切った形だ。
 萩生田光一文科相は12月15日の閣議後記者会見で「少人数学級のニーズは極めて高い。(財政)当局に必要性をしっかり訴え、何とか実現にこぎつけたい」と意欲を示し、17日に行われた麻生太郎財務相との大臣折衝で合意を得た。少人数学級を盛り込んだ予算案は、21日に閣議決定されることになる。

 とはいえ、萩生田文科相が目論んでいた少人数学級が実現するわけではない。
 萩生田文科相は11月13日の閣議後記者会見で、「令和の次代の新しい学校の姿として、私としては30人学級を目指すべきだと考えている」と、「30人学級」を公言していた。
 2021年度予算の概算要求で文科省は、少人数学級実現に前向きな姿勢を示したものの、予算請求では「事項要求」としていた。具体的な目標を挙げず、必要額も示さないのが事項要求である。その時点では、文科省が目指す少人数学級が35人なのか30人なのかわからず、腰の引けた姿勢であったと言える。

 少人数学級実現には、相当の予算額が必要になる。つまり、財務省が首を縦に振らないことにははじまらない。これまでも文科省が少人数学級の姿勢は見せながらも実現できなかったのは、財務省の高くて厚い壁があったからである。
 そこに「30人学級」と具体的な目標を示したことは、旗振り役として萩生田大臣が自らの覚悟を示したことになった。それが、財務省に負けることに慣れてしまっていた文科省に勝ちを呼び込んだ。これによって萩生田大臣は、文科省内部から圧倒的な支持を受ける存在になったことは間違いないだろう。

 しかし、萩生田文科相が掲げたのは「30人学級」であったにも関わらず、決まったのは35人学級である。これは一歩後退とも受け取れる。頑として動かなかった財務省を動かすための譲歩だと言うこともできるだろうが、譲歩はそれだけではない。35人学級となるのは小学校だけで、来年度から5年をかけて実施される。文科省が目指していたのは小中学校での少人数学級だったが、今回は中学校は見送られてしまったことになる。

 麻生財務省との折衝を終えた萩生田文科相は、「数字を言うのはどうしようかな、とずっと悩んでいた。自分を奮い立たせる意味もあって途中から、小中学校で30人という大きな目標を掲げた」と振り返った。そして結果については、「隣(財務省)の壁は高かった、というのが正直な感想」と述べた。
 財務省の手強さを痛感させられたらしい。だからこそ、譲歩に譲歩を重ねることにもなったのだろう。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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