2021年、断絶なき成長への強みが日本にある——人口減少から人財大国へ! 両極化の時代に日本が目指すべき道筋【松江英夫】
二律背反を「つなげる」成長戦略Vol.2
2021年の年頭に考えたい、
日本と世界の共通の課題—————それは「断絶なき成長」の実現である。
いま、先例なき課題先進国として日本は何を強みとすればよいのか。
私たちが直面する両極化の時代、日本の未来図を構想する。
キーワードは「人財」である。
■2021年「断絶なき成長」が世界共通のテーマになる
相反する力が同時に強まる両極化の時代。コロナ禍で加速したグローバル化、デジタル化、ソーシャル化の3つの潮流における両極化のうねりは、より本格的な流れとなる。同時に、コロナ禍にあって生存の危機を経験して見直される社会的な存在意義、持続可能性(サステイナビリティ)の重要性は益々高まっている。
両極化の構造変化は、今までになかった新たな成長機会を生み出す一方で、潜在的には環境破壊(気候変動)、経済格差、社会不安において混乱と断絶を生む可能性もはらんでいる。
断絶がもたらす社会不安や経済格差など負のリスクを世界中が乗り越えて、いかに持続的な成長軌道に転換できるか、いわば「断絶なき成長」は2021年の世界が共通して追い求めるテーマになる。
■日本の成長の本質は人財の価値を高めること
「断絶なき成長」に向けて日本はいかなる歩みをするべきか。課題先進国の日本であっても、逆に発想を変えれば強みとして活かせる特徴がある。
例えば、断絶や格差という点では、他国に比して日本は、社会保障制度が行き渡るため経済格差が一定範囲に収まり社会的断絶の不安が相対的に少ない。さらに古くは三方よしに代表される社会的意識の高さ、高い平均寿命、長寿企業の数の多さ等、個人、企業、社会システム全体において持続可能性の素地はすでに備わっている。つまり「時間軸の長さ」に立脚した体験・知見を〝強み〟として活かせば、世界に先駆けて断絶なき持続可能な社会モデルを構築できるのだ。
しかし最大の難関が、人口減少下における「成長」である。これからの日本が持続的に成長するには、海外での稼ぎや人材受け入れの拡大もさることながら、一人ひとりの付加価値や生産性を高めることこそ王道である。つまり、いかに一人あたりの付加価値を高めて〝人財〟化するか、人口減少下での「人財大国」を目指すことが成長戦略の要諦である。
実際に日本は中高年層の経験・学力が世界的に見て高いという国際比較のデータがある。〝時間軸の長さ〟や〝人財価値の時間的蓄積〟などの特徴を活かして社会全体を底上げする断絶なき持続的成長こそが、日本が世界に先駆けて目指す姿なのだ。
■人財大国に向けた5つの政策「組み合わせ」
「人財大国」の実現に向けた道のりをいかに描くか。人財政策のカギを握る5つのテーマについて課題解決の切り口を提言する。
両極化の時代における課題解決のキーワードは「組み合わせ」にある。相互に矛盾を含んで課題が複雑化する時代の中では、単純な二者択一ではなく、さまざまな要素を組み合わせて、難解な連立方程式を解き、最適解を見出す力が求められる。人財政策においては、5つの組み合わせの視点から新たな政策目標となるアイデアを提言する。
《2021年「断絶なき成長」日本の課題》
これが両極化の時代に日本が目指すべき道筋
■人口減少下における成長:一人ひとりの生産性向上
■成長の条件:人財の価値を高めること(人財大国)
■人財大国へ向けた5つの政策「組み合わせ」
❶「GDPと人的資本」の組み合わせ
❷「産業政策と人材育成」の組み合わせ
❸「官と民の組み合わせ」
❹「雇用の柔軟化」への組み合わせ
❺「富の再分配」における組み合わせ
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