「自分にしかできない仕事」の大間違い
「自分だけの仕事」を「みんなができる仕事」に トヨタ式で早く帰る④
「〇〇さん」にしかできない仕事を置き換えよ
このようにB社には「〇〇さんにしかできない仕事」がたくさんあり、経営者自身、こうした社員をありがたい存在と考えていましたが、トヨタ式の工場をいくつも見るうちに「もしかしたら〇〇さんにしかできない仕事なんかないんじゃないか」と考えるようになったのです。
たとえば、トヨタ式の工場は整理整頓が徹底され、倉庫には必要最小限のものだけが置かれ、何がどこに何個あるかは入社したばかりの社員でさえ分かるようになっていました。あるいは、機械設備の調整はとても簡単で、B社で時間のかかる段取り替えなどもほとんどワンタッチで行っていました。
言わば、B社ではベテラン社員が難しい仕事を難しいままにすることで、本来は「誰にでもできる仕事」を「自分にしかできない仕事」にしていたのです。もちろん彼らに悪意があったわけではありませんが、会社は「〇〇さんにしかできない仕事」が多ければ多いほどムダも多くなりますし、「〇〇さん」は休むことも許されないのです。
B社の経営者はすぐにいくつもの改善を行うことで「〇〇さんにしかできない仕事」をほとんどなくすことができました。ベテラン社員にとってそれは仕事と誇りを奪われるようなものでしたが、B社経営者は彼らとしっかりと話をすることで理解と納得を得ることができました。
組織の中を見渡した時、あまりに仕事が集中する人がいるのはやはり不自然ですし、「〇〇さんにしかできない仕事」があれば、「本当にそうなのか?」と問いかけてみることが必要です。まずは「〇〇さんにしかできない仕事」が「本当に必要なのか?」を問いかけ、必要なら今やっていることをきちんと文書化した「標準作業」をつくり、「誰にでもできる仕事」へと変えていくことです。
そのうえで「〇〇さん」は「教える」とか、「標準作業を書き換える」ことを通じてさらに成長できますし、企業としても人が育つ組織へと変わっていくことができるのです。