本田宗一郎が怒鳴った部下、怒鳴らなかった部下「進歩とは反省の痛みの深さに正比例する」
【連載】「あの名言の裏側」 第1回 本田宗一郎編(1/4)「本田宗一郎が殴った部下/殴らなかった部下の違いとは?」
進歩とは反省の痛みの深さに正比例する
──本田宗一郎
アナタは「名言」って、お好きですか?
ネットを見回せば、心にグッとくる名言やら格言やら箴言やらを紹介する記事が溢れていますし、名言集のような本も絶えることなく刊行され続けています。
意気消沈しているとき。何かに悩んでいるとき。自分の今後に迷い何かしらの指針がほしいとき。心に殺伐とした風が吹き、あらゆることに熱意が持てなくなったとき──とかく心に何かを背負ってしまいがちな人間にとって、たまたま出会った名言が強い力となり、糧となることが少なくありません。翻って、人は何かにつけて名言を求めてしまう生き物なのだ、と大風呂敷を拡げてしまうのも、あながち間違いではないでしょう。
というワケで、このコラムでは著名なビジネスパーソン、歴史上の偉人といった方々の名言にフォーカスし、その発言の意図や背景にある思い、さらにはその人物の人となりや功績などを紹介していければと考えております。
といっても「あぁ、これは心に染みる、素晴らしい名言でございますね~」などと“お手盛りシャンシャン”な姿勢でで、キレイごとだけに終始するつもりは毛頭ございません。多少ナナメの角度からの生温かい視点を忘れることなく、適度にツッコミなどを挟みながら、名言を掘り下げていくつもりです。発言者の意外な素顔や、言葉と実態のちょっとしたズレといった側面にも光を当てつつ、ざっくばらんに書き付けていく所存なので、どうぞ肩肘はらずにお付き合いいただければ幸いです。
さて、初回なので前置きが長くながってしまいましたが、そろそろ本編へと進んでまいりましょう。今回取り上げるのは本田技研工業(ホンダ)の創業者である、本田宗一郎氏です。1906(明治39)年~ 1991(平成3)年)と、明治、大正、昭和、平成という4つの時代を生き抜き、日本の発展に大きく貢献した偉大な経営者のひとりです。
数々の逸話を残している本田氏なので、いまさら説明するまでもないところがあるのですが、巷間持たれているイメージとしては「“生涯、一技術者”の姿勢を貫きとおした、人情肌で自由奔放な、進取の気質にとんだ熱血漢」といったところでしょうか。