本田宗一郎が怒鳴った部下、怒鳴らなかった部下「進歩とは反省の痛みの深さに正比例する」
【連載】「あの名言の裏側」 第1回 本田宗一郎編(1/4)「本田宗一郎が殴った部下/殴らなかった部下の違いとは?」
技術職は職人の世界であり、殴られたり蹴られたりしながら仕事を覚えていく──昭和のころまではそんな価値観が色濃く残っていたのも事実で、本田氏の言動もそうした時代性ゆえと捉えることもできるでしょう。ただ、現代であれば間違いなく「パワハラ」と指摘され、世間からはゴリゴリのブラック企業として揶揄されたり、誹られたりしたと思われます。本田氏には「よく『オマエがかわいいからこそ怒るのだ』と言ったりするが、オレはオマエが本当に憎らしいから怒っているんだ」と言い放った、なんてエピソードもあり、わりとシャレになっていません。やはり「ちょっと面倒くさい、おっかないオヤジさん」という横顔は確実に備えていた方みたいです。
もっとも「本気で殴りかかるのは役員連中に対してであり、若手には手を上げることがなかった」といった社員の証言も残っているので、ちゃんと相手は選んでいたのでしょう。また、どんなに激高しても、翌日にはケロリとして、いつもどおり接してくれたという声も多く、どこか憎めないキャラでもあった様子。
エキセントリックな一面を持つ個性派だけど、妙に求心力があって、多くの人から愛される。それもまた、人間力の高さと解釈することもできるのではないでしょうか。
本田宗一郎氏の名言と逸話、あと数回続きます。