「パラダイス文書」疑惑。漫画家・鳥山明さんに罪はない
【パラダイス文書】を橘玲氏が徹底解説3/3
会社がタックスヘイブンを使うのは当たり前? その是非をとは
橘…武富士の場合は創業家が自分たちの資産をタックスヘイブンで節税していたわけですが、今はAppleやGoogleなどのグローバル企業がタックスヘイブンを使って税逃れをしていると名指しで非難されています。
シズカ…確か、今回のパラダイス文書でもAppleの租税回避が明らかになっています。
橘…はい。ただ、彼らは「すべて合法なのだから非難される筋合いはない」というスタンス。それはそれでひとつの正論ではあるわけです。
トオル…でも、日本でも多くの消費者がアップルの製品を買っているのに、その利益が日本に還元されないのは適切じゃない気が……。
橘…株式会社の経営者の仕事は、できるだけ多くの利益を株主に分配することですから、納税額を最少にするのは彼らの義務ともいえます。それに、私たちだって株やファンドを買って株主になることがある。そうなると配当が多いほうがいいわけで、同じ国民でも利害が分かれてしまいます。
トオル…そうは言っても、僕は今後も株主なんてなる予定はないし、やっぱり不平等だよ! ここは積極的に法律を変えていくべきじゃないかな。
橘…タックスヘイブンに対しては、90年代までは日本の税法は穴だらけでしたが、いまではかなり整備されて、日本国内でできることはほとんどやっているのではないでしょうか。ただ、国家間の税制のズレについては相手がいることですから、一国ではどうしようもありません。日本が自力で解決するには限界があるのです。
シズカ…結局、タックスヘイブンはうまくスキームを考えれば違法にもならないし、株式会社の理屈からすれば道義的にも完全悪とは言い切れない、というわけね。
トオル…ぐぬぬ……これが資本主義における弱肉強食の世界。よし、かくなる上は僕もタックスヘイブンの仕組みをもっと理解して得をする側になるぞ!
橘…そうですか。ちなみに、スイスあたりのプライベートバンクでまともなお客さんとして扱ってもらうなら、10億円ぐらいは必要です。
トオル………。まあ、しばらくは昇給めざして会社でコツコツ頑張ります。