意外に最近?「初日の出」の見物は、近代に生まれた行事だった
春夏秋冬 庶民の歳事、今昔②
日本には、季節や節句に合わせた年中行事が古くから数多く存在する。しかし、なかには時代とともに廃れたもの、意味が変わったものも少なくない。江戸から現在までの庶民のイベントの様子を、絵や写真とともに振り返る。今回は「正月」篇(雑誌『一個人』2018年1月号より構成)。
正月の年中行事といえば?
年越しイベントで新年を迎え、その足で初詣へ――。そんな現代の正月は、寒さの厳しい冬の時期。しかし江戸時代は旧暦。元日といえば立春に一番近い新月の日にあたり、春の訪れを告げるものだった。これは「新春」という言葉からも窺える。
また今では当たり前になった有名寺社への初詣も、これが一般化したのは明治時代以降のこと。鉄道網などのインフラが整備され、深夜移動が可能になってから。江戸時代は、元日には祝いの膳を用意して、家族揃ってゆっくり過ごし、一月二日に初売りなどへ繰り出した。
◎初日の出(江戸時代)
~江戸時代に庶民に定着~
元日に日の出を見物するようになったのは、江戸中期以降とされる。潮干狩りの名所である洲崎(現在の東陽町付近)には、多くの人が詰めかけた。
◎猿曳(明治)
~家々の前で芸を披露し新年を祝った~
厩のお祓いとして初春に行われていたが、江戸中期以降は見世物として全国を巡業。明治時代には正月に家々を回って芸を見せては、おひねりをもらっていった。
◎初詣(大正)
~鉄道の発達で郊外への参拝も可能に~
初詣に向かうモガ(=モダンガール)も。鉄道網が発達するにつれて、着飾って有名な寺社へ足を運ぶ人が増えた。
〈雑誌『一個人』2018年1月号より構成〉