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【2021年の教育現場予測】「教員の質」問題に備えよ

第60回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

少人数学級

■少人数学教の目的は教育環境の最適化と教員の負担軽減

 2021年の教育現場において、大きなテーマになりそうなのが「教員の質」である。
 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)騒ぎのなかで、一気に盛り上がったのが「少人数学級」に関する議論だった。そして、その多くは「3密(密閉、密集、密接)」を避けるには教室の生徒数を減らすべきだ、という趣旨であった。
 しかし、少人数学級は新型コロナ対策のためだけに求められているものではない。子どもたちに対する細やかな教育を実現し、それぞれの子どもたちが健やかに成長していくためには、教員の目が行き届く環境が必要不可欠である。

 個々に向き合えば、子どもたちは多くの問題を抱えている。そこに教員が寄り添っていくには、現状の1人の教員が担当する子どもの数が多すぎる。学級あたりの子どもの数が少ないほど「成長を支援するための教育」が実現できる。しかし、新型コロナをきっかけに、2021年度から小学校での35人学級の導入が決まったものの、まだ不十分だと言えるだろう。

 少人数学級の実現は教員の負担を軽くすることにもつながっている。それも目的のひとつのはずなのだが、今回の少人数学級導入の議論のなかでは無視されている気がしてならない。
 教員に楽をさせる、といって否定的な意見があるかもしれない。しかし、教員が本来の教育を行うためには負担を軽くし、子どもたちに寄り添う時間を確保することが必要である。また、近年では子どもたち個々が抱える問題も複雑になってきており、教員の負担は健康を損ないかねないところまできている。少人数学級は1日も早く実現していかなければならない。

 そんな中で35人学級とはいえ、少人数学級の導入が決まったわけだが、今度は「教員の質」を問題にする動きがジワジワと始まってきている。これについては、少人数教育導入のための予算をめぐる文科省と財務省の攻防でも取り上げられている。
 財務省は昨年10月26日に開かれた財務相の諮問機関である財政制度等審議会の歳出改革部会に資料を提出し、そこで少人数学級の導入に反対する見解を明らかにしている。そこには、「教員定数の増は採用倍率の更なる低下を招き、教員の質の低下が懸念される」という一文がある。
 少人数学級を導入すれば教員の数を増やす必要があり、そうなると採用倍率は低くなるので教員の質は低下する、というわけだ。
 そして、早稲田大学の田中博之教授の見解として、次の引用をしている。

「学校現場では、教員採用試験の競争率が3倍を切ると優秀な教員の割合が一気に低くなり、2倍を切ると教員全体の質に問題が出てくると言われている」

 教授による具体的な例が示されているわけではない。財務省は文科省に対して「少人数学級導入によって効果が上がる証拠をだせ」と言い続けてきたが、その財務省が説得力のある証拠を示すわけでもなく「見解」だけを理由にしている。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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