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「志村けんと岡江久美子、他人事だったコロナ観を変えた隣人の死」2020(令和2)年その1【連載:死の百年史1921-2020】第5回(宝泉薫)

連載:死の百年史1921-2020 (作家・宝泉薫)

 なんにせよ、その死をめぐってさまざまに語られるのは、その人生が世の中に爪痕を残した証しである。たとえば、志村についても「セクハラ芸もやっていた」として、フェミニスト陣営が批判に利用していたものだ。

 もちろん、そんな野暮な指摘は少数にすぎない。朝ドラ「エール」では事実上の最終回に彼をワンカットだけ出演させた。たまたま撮れていたという、鏡に映った笑顔を利用して、彼が演じた人物と主人公との心の交流を感動的に盛り上げたのだ。また「志村どうぶつ園」は半年にわたって、彼の生前映像をふんだんに使うことで延命したし、年末には「ドリフ・バカ殿・志村友達大集合SP」(フジテレビ系)という特番も放送された。

 要は「死ぬのはいつも他人ばかり」だから、それを利用できるのももっぱら生者の側なのだ。本業の笑いだけでなく、その死が最大の感染対策につながったとされるなど、日本中の他人に利用された志村。それこそがまさしく、国民的人気者としての誉れといえる。

(宝泉薫 作家・芸能評論家)

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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