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「リメンバー・パールハーバー」は変遷している

日米戦争を仕掛けたスターリンの工作! インテリジェンス・ヒストリー①

 結果として、式典の名称からは「攻撃」という言葉は削られました。そしてブッシュ大統領の記念演説も国防の重要性を強調するものでした。私もこの式典に参加し、その経緯を取材しましたが、アリゾナ記念館の関係者はこう述べていました。

「同盟国の日本をいつまでも批判するのは得策ではないのだ。それに真珠湾攻撃の当時はわからなかった歴史的な経緯も判明してきていて、真珠湾攻撃を『日本軍による卑劣なだまし討ち』と非難するのも適当ではない。ただし、真珠湾攻撃を受けた当時の軍人たちが生きているうちは、真珠湾攻撃に関する『神話』、つまり日本軍による卑劣なだまし討ちという評価を変えることは難しいだろう」

 この発言には、三つのポイントがあります。

 第一に、歴史の評価は、政治的な関係によって変わっていくということです。アメリカからすれば、日本は同盟国、大事な友好国です。その同盟国を批判する歴史観は打ち出しにくいと言っているのです。

 昔は仲が悪く、その人のことを悪く言っていたが、今は友人なので、悪口は言わないようにしている、ということです。確信的な反日派を別にすれば、アメリカの大半は、仲良くなれば、その歴史観を変更してくれる、実に「友人」を大事にする国なのです。

 第二に、そもそもアメリカの歴史学者たちが批判しているように、真珠湾攻撃は日本軍による卑劣なだまし討ちなどという簡単なものではありません。真珠湾攻撃に至るまでに日米両国の間では激しいやり取りがあり、戦争が起こるのは不可避であったと考えられるようになったのです。そうした歴史研究の成果をさすがに無視することはできないと考えるアメリカ人が増えてきているということです。

 第三に、アメリカは軍人の国で、退役軍人たちの政治的影響力は絶大です。そのため、真珠湾攻撃を受けた当時の軍人たちが生きている間は、表立って歴史を見直すことはできない、ということです。これは言い換えれば、第二次世界大戦当時の軍人たちがいなくなれば、歴史の見直しが進んでいく、ということでもあります。

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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