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ファンタジーの「社会的養護」はもういらない

「セックスワークサミット2017秋 」第3部レポート 第4回

性風俗で働く人のための無料生活・法律相談サービスを行っている「風テラス」。その活動に携わる弁護士の安井飛鳥さんより、近年メディアなどで関心が高まっている「社会的養護」の現状と、性風俗との関係について語っていただいた。「セックスワーク・サミット2017」第3部より。 第3回〈「JKビジネス」女子がみんな欲しがるモノ〉に続く第4回。

●「よくないからやめよう」は意味がない

 

 性風俗で働く『アンダー』の子どもたちについてどのように考えたらいいのか、児童福祉と少年司法、風テラスとJKビジネスへのアウトリーチ実践を踏まえたうえでの考えをお話します。

 非行少年の支援と『アンダー』の子ども達への支援は通じるものがあると思います。それは「よくないからやめよう」というメッセージがあまり意味を持たないことです。本人は、よくないことだと分かり切った上でやっている。「よくないからやめよう」でやめられるのであれば苦労しない。

 大人の支援者の関心は、「今本人が何をしたいか」よりも「(支援者側が)問題(と思っている)状況をどう解決するか」ということばかりに偏りがちです。この子をいかに更生させるか、性風俗を辞めさせるかということばかりに主眼が置かれてしまい、本人がどういう思いで何を望んでいるかという部分のアセスメントが置き去りにされてしまう。

 非行少年たちは、話をしていく中で、どこかでぽろっと「普通」という言葉を使うことがあります。それは「普通」の生活を送りたいという漠然とした憧れみたいなもの。その一方で、「普通」への諦めみたいなものもあって結局、自暴自棄になる子もいる。支援者側もついつい「普通」の生活をさせようとしますが、そもそも「普通」って何なのか、「普通」になるのがゴールなのか。

 私は、非行少年と関わる時は「再非行させないこと」を至上命題として関わることはしません。もちろん、その子が再非行してしまったら肩を落としますが、それで必ずしもその子はもうダメだ、支援は失敗だったとは思わない。再非行に至らせてしまったこちらの詰めの甘さは見直さなければいけません。ただ、子どもの支援全般に言えることですが、子どもは成功と失敗を繰り返す存在です。五歩進んで十歩戻る、時には後ろに全力疾走するようなこともありながらも、徐々に成長していく過程をたどるので、一つのことにとらわれて成功・失敗を決めつけてしまうのはよくない。

 性風俗の世界で働こうとする『アンダー』の子ども達についても同じことがいえるのではないでしょうか。

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「セックスワーク・サミット2017冬 「つながる風俗女子」+シンポジウム「みんなでつくる『適正風俗』」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)が、2017年12月3日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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