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アメリカでルーズヴェルト批判がタブーだった理由

アメリカは一枚岩ではない! インテリジェンス・ヒストリー③

英雄視されたルーズヴェルト大統領

 ルーズヴェルト大統領(在任一九三三年三月四日~一九四五年四月十二日)は、アメリカ合衆国史上唯一、四選された大統領です。
 裕福な名家に生まれ、十四歳まで学校に行かずに家庭教師の教育を受けるというお坊ちゃま育ちでした。

 若くして民主党内で頭角を現すことができたのは、日露戦争のときに仲介役を買って出たあのセオドア・ルーズヴェルト大統領の親戚というネームバリューがあったおかげですし、大統領になれたのは本人の実力というよりも、大恐慌後の経済政策に失敗した共和党のフーヴァー大統領が完全に人望を失っていたからです。リーマン・ショック後の麻生内閣や、その後の民主党内閣が政権を失ったときと同じように、「フーヴァー共和党政権ではもうダメだ、とにかくフーヴァーを降ろしたい」という空気だったのです。

 とはいえ、ルーズヴェルトは強靭な精神力と闘争心があり、政敵との議論の強さと演説の上手さには定評がありました。
 特に、三十九歳でポリオに感染し、歩行が不自由になってからの病気との戦いぶりは凄まじく、政敵ですら賞賛するガッツを見せています。ルーズヴェルトは救国の指導者として讃えられ、戦後もずっと英雄視されてきました。

世界恐慌 ニューヨークのウォール街

 理由の一つは、経済です。

 一九二九年に始まる大恐慌に際して、経済政策を失敗し、アメリカを空前の不況に陥れた共和党ハーバート・フーヴァー大統領に代わって、大胆なニューディール政策でアメリカ経済を立て直したことが大きな功績だとされています。

 就任後百日間に矢継ぎ早に大型公共事業を始めるなどの経済政策を打ち、景気回復を速やかに軌道に乗せたと評価されています(実際は、それほど景気回復に成功していません)。 

 もう一つの理由は、米軍の最高司令官としてナチス・ドイツという「究極の悪」を倒し、自由世界を守る戦いに勝利したというものです。

 連合国を率いて第二次世界大戦に参戦し、その間、毎週、炉辺【ろへん】談話と呼ばれる演説で国民に直接、ラジオで語りかけて士気を高めました。

 経済危機から国民を救い、ファシズム諸国を倒してアメリカと連合国を勝利に導いた偉大な大統領だったというのが、今なお根強くあるルーズヴェルトのイメージの一つです。

『日本は誰と戦ったのか』より抜粋)

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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