現役生活21年。井口資仁がもっともスゴいと感じた選手とは
井口資仁監督に聞く。Q19. この選手はすごいと思い、刺激を受けた選手はいますか?
■納会で相部屋になった秋山幸二さんに憧れて
ダイエー・ホークス時代、いっしょにプレーした秋山幸二さんですね。
僕が子供のころから、西武ライオンズでプレーしている姿を見てきました。身体能力が高く、打って走れるプレースタイル。もう少しで40-40(40本塁打&40盗塁)を達成できそうなシーズンもあったじゃないですか。「こういう選手になりたい」という目標でしたね。
僕がプロ入りした時、秋山さんは既に35歳になっていました。でも、他の同年代の選手たちと比べて、一人だけ身体の動きが全然違っていたんです。
ああ、自分も年を重ねたとき、こういうベテラン選手になりたいなと思いましたね。多くを語らず、黙々と練習を重ねて、背中で範を示すところも格好良かった。
実は、秋山さんが現役を引退されたシーズン、球団の納会で相部屋になったんです。いろいろな話をさせてもらいましたけど、中でも「メジャーリーグに挑戦したかった」という言葉が思い出に残っています。
僕はアマチュア時代に出場した五輪での経験などから、世界の野球への興味を増していき、いつかメジャーリーグでプレーしたいという目標を持つようになりました。そして、実際に海を渡る決断をしたわけですが、この時の秋山さんの言葉が決心する上で僕の背中を押してくれたことは間違いありません。
秋山さんは、憧れの対象として“凄い”と思いましたが、「これは敵わない」という意味での凄いと思う選手は、山ほどいました。やっぱり、プロの世界ですからね。「こいつはすごく飛ばすなあ」とか「あの肩の強さには敵わない」という存在なんて数えきれないほどいました。まあ、そういう選手だからこそ、プロの一軍でプレーできているわけなんですけどね。
ただ、そういう選手たちに対して、「絶対に敵わない」と完全に白旗を挙げたわけではありません。そういう相手に対しても、自分が勝てる分野を探せばいいんです。
打率が高く、長打も打てて、走塁も一流。さらに守備も上手く肩も強い。そんなすべてのツールに優れた選手……つまり成績表がオール5のような選手はなかなかいません。
ある分野の成績が3だとしても、別の分野で5があればいいんです。そして、そこで勝負をかける。それが、プロの世界で生き残る術の一つです。
最後に一つだけ付け加えますけど、たとえ自分に飛び抜けた要素がなくても、そのすべてが平均点以上ならば、それも一つの武器になると思います。いわゆるオール4のようなタイプです。
何をやらせても人並み以上という能力も、プロの世界を生き抜く上での、立派な個性だと思います。