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「全米ライフル協会」テキサスに移転はアメリカ合衆国で内戦が起きる予兆?

武装権を否定されたアメリカ人は共和国の市民じゃない

■銃規制は基本的人権の侵害

 アメリカ合衆国憲法は1787年に作成され、1788年に発効し、現在も機能している世界最古の成文憲法である。1791年から1992年までに憲法に27の修正条項が加えられている。

 最初の修正条項である修正第1条(Amendment I)から修正第10条(Amendment X)までを権利章典(Bill of Rights)と呼ぶ。憲法中の人権保障規定のことを言う。

 1946年11月3日公布、1947年5月3日施行の日本国憲法は一度も修正改正されたことがない。日本人からすれば、憲法にどんどん修正条項が加わるというのは不思議かもしれない。しかし、全く変わらない修正されない憲法というものは異常である。時代は変化するのだから、変化に即した修正はあってあたりまえである。

 アメリカ合衆国憲法修正第1条は、まず国教の樹立を禁止している。宗教の自由な行使を妨げる法律を制定することを禁止している。関連して、言論出版の自由、集会・結社の自由、請願権の保障などを規定している。つまり思想、信条の自由こそが、基本的人権の最初に来る。

 次の修正第2条は次のように規定している。「規律ある民兵は、自由国家の安寧にとって必要であるから、武器を保有し、および携帯する人民の権利は、これを損なうことができない」(A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.)と。

 この「民兵」(militia)というのは、武器を所有し、いざというときには武器で戦うことができる市民のことだ。アメリカ人は、このmilitiaをミリシアと発音せずに、なぜか「マリッシャ」と発音する。

 アメリカ合衆国憲法の権利章典には、思想の自由の次に武装権が来るのだから、アメリカにおいては、武装権がいかに人権として、重要なものと考えられているかがわかる。

 今は21世紀であり、開拓時代のアメリカではない。武装権など時代錯誤に見えるかもしれない。しかし、今でも武装権は、多くのアメリカ人にとっては基本的人権のひとつである。

 彼らや彼女たちは、もし軍隊や警察という公設武装組織や、犯罪者集団のような私設武装組織が、市民に武器を向けたら、武装権のない市民は抵抗できないと考える。自分や家族の生命と財産(所有権)を守るのは基本的人権である。では、どうやって守るのか? 武器によってである。だから武装権なのだ。

 現在のアメリカにも、自分たちを「民兵」と呼び、週末に軍事訓練をしている集団が少なからずいる。いつ政府が自分たちの権利と自由を侵害するかもしれないから。いつやって来るかわからない警察に頼るよりも、自分たちで自分たちの共同体を守るために。

 彼らや彼女たちは、銃規制派を「市民から自己防衛の手段を取り上げて自由の国アメリカを奴隷国家にしたい勢力や、その勢力から洗脳されて自己防衛の手段を捨ててしまった人々」だと考える。

 1990年代には銃乱射事件が頻発し、クリントン政権時代に銃規制派の活動は勢いを増した。連邦政府は初めて本格的に銃器市場の統制管理に乗り出した。それまでは、自己申告ですんだ銃購入者は身元審査を受けることになった。

 しかし、そもそも銃犯罪者は、このような正規のルートで銃を購入しない。簡単に銃を買うことができる闇市場で入手する。だから、銃規制しても銃犯罪は激減しない。

 犯罪者はいくらでも簡単に銃を購入できるのに、健全な市民は自己防衛のための銃の購入と入手に最低2週間の身元調査期間を必要とするのだ。警察に電話しても、警官よりもピザのデリバリーのほうが早く到着する国において。これはこれで理不尽だ。

次のページ銃規制派がアメリカを内戦状態にするかもしれない

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。

 

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