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宮城県石巻市で目撃される幻の「駐車」標識

【毎月20日更新】世にも奇妙な道路標識 第9回:幻の標識の最高峰「駐車三兄弟」を追う

 

「平行駐車」のある風景

 というわけで、これら駐車三兄弟の発見報告はしばらくの間なかった。その沈黙が破られて「平行駐車」標識が登場したのは、筆者の記憶では2015(平成27)年のことだ。ということで筆者は、そのうちJR石巻駅(宮城県石巻市)の駅前通りに設置されたものを見に行ってきた。

 仙台からJR仙石線に揺られること1時間、宮城県第2の都市石巻に到着する。地元出身の漫画家・石ノ森章太郎のキャラクターがそこここに飾られた街の中、目的の標識はすぐに見つかった。

写真を拡大 石巻駅前の「平行駐車」

「平行駐車」は「駐車可」の標識とともに、ポールに2枚縦に並んで掲げられていた。標識は通りに2ヶ所あったので、裏表合わせて4枚ということになる。日本でも数ヶ所という超貴重品だが、人も車も標識に目もくれず通り過ぎてゆくのは悲しいところである。居酒屋の並ぶ通り沿い、タクシー乗り場に立てられていることから、客待ちタクシーに向けた標識であるのだろう。

 他にこの「平行駐車」が立てられているのは、同じ石巻市の石巻あゆみ野駅前、女川町の女川駅前、東松島市の東名駅前と、いずれも宮城県の海岸沿いの駅前通りである。お気付きの通り、いずれも2011年の東日本大震災によって大きな津波被害を受け、再建されたエリアだ。

写真を拡大 津波の浸水高を示す標示(石巻駅前)

 しかし、これらのエリアにだけ「平行駐車」を設置すべき明確な理由は見えてこない。画像などで確認する限りいずれも普通の道路であり、わざわざ言われなくても平行に止めるでしょ、という感じである。雪で路面のペイントが隠れてしまうからかとも思ったが、それなら北海道や新潟にはもっとこの標識が立てられていてよいはずだ。

 というわけで宮城県警に設置理由を問い合わせたところ、返ってきたのは「道路管理者や駅の管理者といった関係者の意見等を踏まえて標識を設置した」という通り一遍な回答であった。まあ役所やら警察やらにこうしたことを問い合わせて、「なるほど!」と腑に落ちる答えが来たことは、ただの一度もありはしないのである。

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佐藤 健太郎

さとう けんたろう

1970年兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。大手医薬品メーカーの研究職を経て、サイエンスライターとして独立。文系の読者にもわかりやすい解説で定評があり、東京大学大学院理学系研究科の広報担当特任助教として東大の研究実績を対外発信する業務も担当した。『医薬品クライシス』(新潮新書)で2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞を受賞。著書はほかに、『「ゼロリスク社会」の罠』『化学で「透明人間」になれますか?』(ともに光文社新書)、『炭素文明論』(新潮新書)、『ふしぎな国道』『世界史を変えた薬』(ともに講談社現代新書)などがある。


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